頭の良さは「回転」で鍛える ビジネスで役立つ多角的視点を身に付けるクイズ
ビジネスにおける代表的な思考法として「垂直思考」と「水平思考」の2つがよくあげられる。
垂直思考とは「ロジカルシンキング」のことで、一つの問題を徹底的に深く掘り下げていく考え方。一方の「水平思考」は「ラテラルシンキング」と呼ばれ、同じ現象を様々な角度から眺め、自由で大胆な発想を促す考え方だ。
この2つの思考法には共通点がある。「視点の移動」だ。
「奥へ、奥へ」という視点を進めていく「垂直思考」と、一つの物事を多角的な視点で捉える「水平思考」。その基礎的な力となる「視点の移動」は、実は訓練で鍛えることができる。
『メンタルローテンション “回転脳”をつくる』(扶桑社刊)は、脳研究者として知られる池谷裕二さんが、ビジネスにおいても、そして普段の生活においても必須の思考力「メンタルローテーション」を鍛えるための「クイズ本」だ。
■なぜ「メンタルローテーション」は私たちの生活に必要なのか?
「メンタルローテンション」は日本語では「心的回転」と呼ばれる。その言葉通り、頭の中で物体や文字・記号などをクルクルと回してイメージすること。さまざまな角度から対象物を捉えるための想像力、推理力とも言える。
例えば、「91」「90」といった数字は、逆さにすればそれぞれ「16」「06」という数字になる。本書の冒頭には、その見え方に託けて、駐車場で自動車が駐車している場所の番号を当てるクイズが登場する。
自分がいる方向に向かって駐車されている自動車の左隣の番号は「88」、右隣の番号は「98」。ではその間の数字は? という問題。答えは「87」だ。
「88―●―89」をそのまま真逆にすると「86―●―88」になり、その間に入る数字は「87」となるわけだ。
これは、その数字をどこから見ているかというところが焦点になる。自動車の運転手からすれば、自分が見ている数字と真逆に見える。
池谷さんは**「紛れもなくメンタルローテーションの問題です。しかし一方では『常識問題』でもあります。なぜなら、車を駐車するときに、運転手がどの方向から数字を眺めているのかを、当事者の立場になって考えられるかが解答の鍵を握っているからです」**(p.10より)と述べる。
つまり、「視点を移動する」という能力は、多角的な視点を得られるだけでなく、相手の立場に立って物事を考えたり、自分を客観的に捉えたりするために必要な能力だということだ。
■実際にクイズを解いてみると、意外と難しい
これまで脳に関する書籍でベストセラーを連発してきた池谷さんだが、実は意外にもこれが初の「脳トレ本」。
本書では、「平面」「立体」「あたま」「こころ」という4つの章で、メンタルローテンションを鍛えるクイズが計128問出題されている。問題は「超初級」から「上級」まで4段階あり、単純ながら考えがいのあるクイズが用意されているのが特徴だ。
「こころの回転」の章で出てくる「上から横から」というクイズでは、積まれているブロックが真上と真横からそれぞれ見るとどのように見えるかを当てるというものだ。
これは超初級編。「これくらいなら解けた」という人は多いのではないか。では、難易度が最も高い「上級」だと、ブロックの数が多くなり、形も複雑になる。
空間を認識する能力が試されるこの問題、上級編ではかなり頭の中で考え込んだ人も多いのではないか。自分が今、見ている視点を逸らして、ブロックを真横から見ている人の立場に立って推理してみる。想像力や創造力、思考力などさまざまな力が試されるはずだ。
さて、クイズの答えをここで公開しよう。正解できただろうか?
超初級は真上が【D】、真横が【B】
上級は真上が【D】、真横が【E】
このメンタルローテーションは「IQ(知能指数)」と深い関係があることが分かっているといい、「IQはもともとメンタルローテーションの能力が反映されるようにデザインされている」と池谷さんは指摘する。
そんなメンタルローテーションを鍛えることができるのが本書。1日数問ずつ、それでも頭をかなり使うことになるだろう。ぜひ本書でメンタルローテーションを磨いてほしい。
(新刊JP編集部)