サラリーマンの知識と人脈では無理?起業で勝つために最初にすべきこと
多くのビジネスパーソンにとって独立・起業は一つの目標であり夢だろう。
ただ、「どこで顧客を集め」「どう売り上げを立てるか」と考え始めると、途端に起業は難易度の高いものに感じられてくる。このイメージによって起業を実行に移せずにいる人は少なくないはずだ。
しかし、起業は決して難しいものではない。そう語るのは著書『誰でも無理なく継続的にお客様が集まる 起業1年目の集客の教科書』(かんき出版刊)で起業初年度から顧客をつかむための集客術を明かしている今井孝さん。今回はその今井さんに、起業を成功させるための心構えや、集客についてのアドバイスをうかがった。
■サラリーマンの知識と人脈では起業で勝てない
――今井さんの最新刊『誰でも無理なく継続的にお客様が集まる 起業1年目の集客の教科書』は、「起業1年目シリーズ」の3冊目になります。今回「集客」をテーマにした理由はどのようなところにあるのでしょうか。
今井:起業しようとする人は、集客をどうするか考えていないことが多いんです。やり方がわからないのではなくて、「商品が良ければ売れるだろう」と漠然と考えていて、そもそも集客のことが頭にない。
事業を始めて売上があがらずに困ってからようやく集客の必要性に気づき、勉強を始めるというケースがよくあります。ですので、早いタイミングで集客のことも考えていただくように、このシリーズでも書いておくべきだと思ったんです。
――起業してすぐのタイミングでは、商品を売ることそのものよりもまずは見込み客を増やす努力をすべしとしています。
今井:そうですね。いきなり売るんじゃなくて、まずは「たくさんの人と仲良くなること」を心がけると良いと思います。近しい関係の「商品の説明を聞いてくれる人」に頼ってばかりいると、いずれその「商品の説明を聞いてくれる人」そのものがいなくなり先細りになってしまいます。
「商品の説明を聞いてくれる人」、つまり見込み客をどう増やすかを考えなければなりません。
――起業したばかりの人ですと、「集客で何をしていいかわからない」という人もいるかもしれません。今井さんのなかに「まずこれから始めるべき」という初めの一歩にあたる打ち手がありましたら教えていただきたいです。
今井:まずは「起業家仲間」を増やすことでしょうね。その中には色々な集客アイデアを実践している人がいるでしょうから、具体的にどうやっているのか聞いてみると得られるものは多いと思います。
これは私自身の実感でもありますが、サラリーマンの知識と人脈だけだとなかなか難しいものがあるので、集客面に限らず起業している知り合いを増やすのは大切なことだと思います。
――起業をする上で集客が大きな不安要素なのは確かですが、それだけを理由に起業しないのはもったいない気がします。集客できるかが不安で起業をためらっている人にアドバイスを送るとしたらどんなことを言いますか?
今井:会社に勤めながら試せることは試してみればいいと思います。一番良いのは新規事業に手を上げてみることかもしれません。
そうでなくても、会社でやれる小さなテストはたくさんあります。集客って結局人をいかに動かすかなので、会社の仕事の中で人を動かす練習をしてみればいい。メールにこんな文面を書いたらこんな反応がきたとか、こんな言い方をしたら周りの人が動いてくれたとか、会社の中で小さなテストを繰り返しながら人を動かす感触をつかんでいくことで、段々と自信がついていくと思います。
――起業全般についてお聞きしたいのですが、起業したばかりの人がやりがちなミスや悪手にはどのようなものがありますか?
今井:概念的な言い方になってしまうのですが「今の自分」からスタートすることが大事です。お客様に対してことさら自分を大きく見せるようなことをすると、後々自分が苦しくなってしまうので。
お客様に「こんなことできる?」と聞かれて「やります」と答えるのはいいんですけど、無理に自分を装う必要はないと言いますか。夢を大きく持つのは素晴らしいことですが、その実現のためには背伸びせずに一歩一歩進んでいくのが一番です。
――起業1年目の「成功」の目安というのはどういったものなのでしょうか。
今井:そこはもうその人次第といいますか、まず自分なりの成功の基準を決めてからスタートすべきだと思います。
――今井さんも会社員から独立起業されていますが、1年目の目標はどこに置いていましたか?
今井:私は1年目は「食っていければOK」という感じでした。まずは最低ラインのハードルを超えると。
――「サラリーマン時代より稼ぎたい」というような気持ちは。
今井:なくはなかったのですが、1年目はそこまでの余裕はなかったかもしれません。とにかく早く採算が取れる状態にしないと、という気持ちばかりでした。ただ、1年目は結局失敗でしたね。赤字でしたし。
――当時は集客もうまくいかず、という状態ですか。
今井:1年目は全然集客できませんでしたね。セミナーを開いたりしても1人しか来なかったこともありましたし。でも、みんなそこからスタートなんですよ。そう考えると勇気が出ました。
――転機のようなものはあったのでしょうか。
今井:マーケティングをきちんと勉強したことでしょうね。それまでは見よう見まねでやっているだけで、マーケティングとは何かという本質を理解していませんでした。
私が会社を辞めて起業しようと思ったきっかけは手がけていた新規事業が成功したことだったのですが、大企業だったので集客といっても既存事業の顧客からある程度確保できていました。新規に顧客開拓する必要はそれほどなかったんです。だから、マーケティングについては、あまり理解していなかったんですよね。
――集客・マーケティングを勉強してからどんなことが変わりましたか?
今井:まずは商品の見せ方、いわゆるコピーライティングが変わりましたよね。商品にどんな価値があるのかを定義して伝えられるようになったことが大きかったと思います。
集客については、最初はとにかく思いついたアイデアを「数撃ちゃ当たる」的に試していただけなのですが、段々と成果が出るようになってノウハウが蓄積されていったように思います。
――集客のアイデアについては常に30個以上はストックしておくべしとされていました。一方で、ちょっとダメだったからといってすぐにやり方を変えるのは良くないとも書かれています。一度始めた集客のアイデアや方法に見切りをつけるタイミングをお聞きしたいです。
今井:ある方法について、ダメな理由が論理的に説明できるならやめればいいと思います。
集客方法自体に良し悪しはあまりないんですよ。YouTubeで成功する人もいれば、チラシを撒いて成功する人もいる。手法の問題ではなく、成功するまでやるかどうかが大事で、もしうまくいっていないならそれは基本的に方法が悪いのではなくて行動量が足りていないと思った方がいいですね。
(後編につづく)