元銀行支店長が語る「資産家」になるための唯一の条件
子育てをする親であれば、子どもにはお金で苦労する人生は送ってほしくないもの。
だからこそ我が子を熱心に教育し、いい高校、いい大学、そしていい会社に入れようと親は奮闘する。しかし、そうした親の取り組みにはどの程度の効果があるだろうか?
子どもにお金で苦労してほしくないのなら、学歴をつけさせることよりも子どものうちからきちんと「お金教育」をする方が大事、と語るのは『あなたと子どものお金が増える大金持ちの知恵袋30』(集英社刊)の著者、菅井敏之さん。
今回はその菅井さんに、子育てに組み入れるべき「お金教育」についてお話をうかがった。お金の本質に迫るインタビュー。後編は貯蓄と投資の真の意味合いについて語っていただいた。
■資産家になるための唯一絶対の条件は「お金を借りられること」
――本の中ではお金の稼ぎ方を身につけるうえで弊害になる親の言動についても書かれていました。「子どものお小遣いを定額制にするのはよくない」は定額制にすることで、決まった日になれば自動的にお金がもらえるという〝受給者意識〟を子どもが持ってしまい、お金の稼ぎ方を覚えないということですよね。「お手伝いはいいから、先に勉強やりなさい」がNGワードなのはなぜですか?
菅井:子どもが自分のために勉強するのはあたりまえのことです。勉強さえしていれば家族の一員としての働きが免除され続けるというのでは、子どもから「お客さま意識」が抜けなくなってしまいます。
親はついつい子どもが勉強していれば安心という考えになりがちですが、「お手伝いはいいから、先に勉強をやりなさい」という親は、子どもの人生を大学を卒業する22歳までしか見ていないことになります。しかし、実際はそのあとの人生の方がずっと長い。
勉強をして立派な学歴を得れば子育て成功というわけではありません。現に学歴があって勉強ができた人がお金に困らない人生を送れているかというと、そんなことはないわけです。
お金で苦労しない人生を送れることやお金持ちになれる条件は「学歴」ではありません。誰かが困っていることを探し、能動的に動いてそれを解決できることです。これが、ビジネスの基本ですから。
――子どもが選ぼうとしている職業が、親から見るとどう考えてもお金で苦労しそうに思える時、子どもにアドバイスをするとしたらどのような言葉をかけるのがいいのでしょうか。
菅井:それはやらせたほうがいいと思います。ただ、その職業でどのくらいのお金が稼げるのかは現実的なデータとして示してあげるべきでしょうね。
たとえば俳優なら、アルバイトなどをせずに俳優の仕事だけで生きている人はこれくらいいて、年収300万円稼げている人はこれくらい、1000万円稼ぐ人はこれくらいいる、というのを調べさせたらいいですよ。そこから先は自分の人生ですから自分で考えて自分で決めなさいと言えばいい。なりたい職業の現実を見せて、それでもなりたいかどうかは自分で考えさせるのがいいと思います。
――お金についての悩みとしてよくあるのが「老後の資金」です。金利が低い今、貯金だけで十分な資産を持つことは難しいということで、投資ばかりがクローズアップされて貯金の重要性がおざなりにされる風潮がありますが、この風潮についてはどんな感想を持たれていますか?
菅井:投資を煽るようなことを言う人はたくさんいますが、そういうことを誰が言っているのかを考えないといけません。銀行か証券会社の人でしょう(笑)。彼らの目論見を知らずに、言われたままに株を買ったりして投資を始める。そんなの全く本質的なことではありません。
ばりばり働ける年齢であれば、手持ちの500万円のポートフォリオがどうとか言うよりも、自分に投資して10万円でも20万円でも今より稼げるスキルを身につける方がよほど賢いということは大人が子どもに教えるべきです。そして、稼いだお金は貯めておけと。
――貯金はやはり重要だということですね。
菅井:重要です。ですが、まず貯金の意味を知っておかないといけません。
資産家と呼ばれる人に共通しているのは、銀行から借りたお金をうまく活用し、資産を増やしていることです。彼らは例外なく銀行との付き合い方がうまい。これは断言できます。
これは言い換えれば、人の力を借りられる人が成功するということなんです。銀行をただお金を預ける場所、投資信託を売っている場所としか認識していない人は豊かな人生は送れません。そこがお金に困らない人とそうでない人の決定的な差なんです。
じゃあどうしたら銀行といい関係を築いてお金を貸してもらえる人になれるかというのははっきりしていて、「お金の管理ができている人」=(イコール)「収支が黒字の人」です。お金の管理ができない人、つまり貸したお金を返してくれなそうな人には、銀行だってお金を貸したくないわけです。
そこで「貯金の意味」という最初の問いに戻りますが、なぜ貯金が大事なのかというと、お金の管理ができている証拠になるからなんです。借りるために貯めるんです。それができれば誰でも資産家になれる。こういうことは誰も言いませんが、資産家は誰でも知っています。
――ただ、やはり投資リテラシーを持つことの重要性は今後ますます高まっていくと思われます。子どもに投資感覚を持たせるためにはどのような教育が有効になりますか?
菅井:投資知識や金融知識を自分で勉強することは大切です。さらに、自分だけでやっていくよりも信用できる専門家にアドバイスをもらいながらやる方がレベルは上がります。
これは投資だけに限ったことではありません。これから社会はより複雑化・専門化しますから、全部自分の力でカバーするのは厳しい。自分のやりたいことに専門家を巻き込んでいく力を身につけることが大切だと思っています。
その意味で重要なのが知識をつけるだけではなくて、自分自身が相手から信頼される人になること。「こいつに自分のノウハウを教えてやろう」と思ってもらえる人になった方が、いい結果が出ます。
――本質的なお話だと思います。
菅井:富裕層の人ほどこういうことを実践しています。彼らの世界は信頼関係で成り立っているんです。 「君の紹介する人なら安心だから会ってみよう」と、〝本物〟同士を紹介しあって、アドバイスをもらい、仲間うちで一緒に豊かになっていくというのが彼らのやり方です。それだけに信用を何より重視するんです。
だからこそ子どもへの教育でもそこを重視します。人の助けを借りないとやっていけない、人の助けがあってさらに大きくなれることを知っているので、人に信頼されるような健全な人間に育てようとする。格好をつけない、ウソをつかない、謙虚で人に感謝する。こういうことを小さいうちから教えています。この教えは、実はどんな家庭でも大切なことだと思います。
――最後に我が子にお金で苦労してほしくないと考える親の方々にアドバイスやメッセージをお願いいたします。
菅井:本の中でも書きましたが、「稼ぐ」「守る」「増やす」「もらう」というお金に関する4つの力を育てましょうということですね。この4つの力があれば、子どもは自立したお金に困らない人間になります。ぜひ読んでいただきたいですね。
(新刊JP編集部)