昭和の名物アナウンサーが振り返る「月面着陸」
1981年から1988年までテレビ番組「クイズ面白ゼミナール」の司会、そして1983年から1985年までは「NHK紅白歌合戦」の白組司会など、多くの人気番組を担当し、昭和史に残るアポロ11号月面着陸の実況も担当したNHKの元名物アナウンサー・鈴木健二氏。
90歳になる鈴木氏が昭和をつづったエッセイが『昭和からの遺言』(鈴木健二著、幻冬舎刊)だ。
本書では、戦争、幼少、青年時代、アナウンサー時代のエピソードを披露する。
たとえば、NHKの就職試験を受けるきっかけについて。
鈴木氏の母方の実家はうなぎ屋だったのだが、そこに出前を注文していたのが愛宕山にあった放送局――NHKだった。鈴木氏は子どもの頃からNHKに親しみがあったという。
このエピソードを鈴木氏がNHKの入社試験の面接で話し、採用が決定したそうだ。
また、冒頭に書いたように、NHKのアナウンサー時代には、月面着陸の実況を担当した。アームストロング船長が月面に足を着けた瞬間、鈴木氏は自ら沈黙を守った。これはこの瞬間の飛行士の言葉は永遠に記念されるべきものなので「その飛行士の生の声を視聴者に送りたい」「それを邪魔したくない」という鈴木氏の思いだったという。
また、鈴木氏は昭和20年3月10日の東京大空襲の惨状を体験している。本書でも当時の戦争体験を綴り、同じ日本人として戦後生まれの人たちに伝えたいことは「戦争の不幸と愚かさ」だと述べる。
昭和を代表するアナウンサーの鈴木氏が、あらゆる出来事やニュースをどのような思いで言葉にしてきたのか。昭和とはどんな時代だったのか。鈴木氏の綴る言葉から感じ取れるはずだ。
(新刊JP編集部)