「本を読む人を増やしたい」 でんぱ組.inc夢眠ねむが明かす「夢眠書店」の野望
秀逸な本のタイトルを選定し、表彰する「第11回日本タイトルだけ大賞」の選考会が12月9日に開催され、大賞に海外文芸作品の『砂漠の空から冷凍チキン』(デレク・B・ミラー著、加藤洋子翻訳、集英社刊)が選ばれた。
・秀逸な本のタイトルを決める“日本タイトルだけ大賞” 今年は『砂漠の空から冷凍チキン』に
「日本タイトルだけ大賞」はスタートから10年を超え、出版社や著者、読書家からも注目を集める“年末の風物詩”。今年も実行委員である山田真哉氏、吉永龍樹氏、上田渉氏の三氏とともに、人気アイドルグループ・でんぱ組.incの夢眠ねむさんが4年連続でゲスト審査員を務めた。
夢眠さんは今年10月、2019年1月7日の日本武道館でのライブをもってでんぱ組.incを卒業し、同年3月末をもって芸能界を引退することを発表。その際に、自身のキャラクターである「たぬきゅん」のプロデュースと、夢眠書店の開店を目指すとコメントしている。
そして今回の「日本タイトルだけ大賞」の公開審査の最中に出てきたのは、**「来年は『夢眠書店』で『タイトルだけ大賞』を開こう!」**という言葉。
新刊JP編集部は公開審査終了直後の夢眠ねむさんに、4回目となった「タイトルだけ大賞」審査の総括、そして夢眠書店について、お話をうかがった。
(取材・文:金井元貴)
■「頭で分かっていることを、こんなにストレートに言われると萌えるんだなあって」
――まずは「日本タイトルだけ大賞」の審査、お疲れ様でした。今年の大賞は『砂漠の空から冷凍チキン』ですが、このタイトルの感想からお願いします。
夢眠:個人賞にしたいくらい好きなタイトルです。料理系の本のタイトルが並ぶコーナーに入っていたのに、このタイトルはすごくポエムっぽい、詩的な印象を受けて。そうしたらまさかの海外文学だったという(笑)
――元のタイトルは「The Girl In Green」なんですよね。
夢眠:海外の映画が日本で全然違うタイトルをつけられることもありますけど、それみたいな。でも、この「The Girl In Green」っていうタイトルが、ミントグリーンをイメージカラーにしている私と共通しているというか、ちょっと運命を感じました。
この「タイトルだけ大賞」って、いつも何らかの形で著者さんに大賞を受賞したことを伝えるんですけど、海外の翻訳本って初めてなので注目ですね。あ、でも翻訳者さんになるのかな?
――今回はアイドル・夢眠ねむとしては最後の「タイトルだけ大賞」でした。でも、終盤はアイドルが言ってはいけない言葉がどんどん出てきましたね。
夢眠:スタッフさんが始まる前から気にして下さっていたんですけど、ポップな下ネタ系のタイトルが多かったんですよ。でも、今、本自体の元気がなくて、その影響で元気になりたくて、ポップめの下ネタが多くなったんじゃないかという話が審査のときにあって、すごく面白いなと思いました。元気がないときに小学生の時の感性ではっちゃけることって大切ですし、それって健全なことでもあるし。
――続いて、今回の夢眠ねむ賞は『体力の正体は筋肉』でした。
夢眠:最高ですよね。見た瞬間、「せやろ!」って思いました。審査の時はまさにタイトルだけしか見ていないので、何かネタっぽい本なのかなと思いきや、その後調べたらすごく真面目な本のようで、すみませんという気持ちが今あります(笑)。でも、可愛いタイトルだなと思いました。
――可愛い!
夢眠:頭で分かっていることを、こんなにストレートに言われると萌えるんだなあと思って(笑)
私は筋肉があまりなくて卑屈だった時代が長かったんですけど、筋肉のある人ってまっすぐで健やかなイメージがあって、そのイメージにタイトルが重なったんです。「本当に筋肉がある人がつけたタイトルだ!」って。だから、筋肉が少なくて卑屈だった私が、今、筋肉がついて健やかになって、筋肉に対してリスペクトを込めて選んだ…ような、選んでいないような(笑)。
――「せやろ!」じゃないですけど、スパッと入ってくるタイトルですよね。
夢眠:当たり前のことを真っすぐ言われると、こんなに響くんだなって。その捻らないストレートさが決め手でした。
■膨らむ「夢眠書店」構想、そして気になる夢眠ねむ“遺言集”について
――来年1月7日のライブででんぱ組.incを卒業され、3月末をもって芸能界を引退されます。引退後はご自身のキャラクター「たぬきゅん」のプロデュースとともに、書店の開店を目指すと発表されました。
夢眠:はい、目指します!
――「夢眠書店」の構想は今、どのくらいありますか?
夢眠:本を読む人を増やしたいという思いがあるんです。だから例えば、お母さんと子どもが一緒に来やすい本屋さんにしたいと思っていて。
・本好きアイドル・夢眠ねむ、“ミーハー読書”のススメを語る(『本の本: 夢眠書店、はじめます』のインタビュー)
――子どもが将来読書家になってくれるような本屋さんというか。
夢眠:将来につながるような本屋さんを作りたいです。あと、審査員の皆さんから「タイトルだけ大賞の棚を作って下さい」と言われて、それも面白いなって。でも、表紙とか帯とかが見えてしまうと、「タイトルだけ」の面白さが半減してしまうかもしれないので、パッケージングしてタイトルだけ表示して並べる、みたいなそういう棚も作りたいです。
――夢眠さんが審査員を務めるのは今年で最後かも、と思っていたのですが、審査の中で「来年のタイトルだけ大賞は夢眠書店で!」という話が出てきてホッとしました。
夢眠:そうなんです。だから来年の12月までには書店を開店しなきゃいけなくなりました。夢眠書店で審査会を開催して、その後はどんちゃん騒ぎをして(笑)
――書店だから本もあるので、「ああ、こういう本だったのか」って読書会をするのもいいですよね。
夢眠:いいですよね。「実はこんな本だったんだ」みたいな。ただ、私は事前に読めないので、アルバイトの方に本を仕入れる作業をしてもらうしかないかな。それで「タイトルだけ大賞」の棚をつくって。
――タイトルだけって、逆に想像がすごく膨らみますよね
夢眠:こんな本なのかなとか、審査中に私もいろいろ言っちゃうんですけど、そこで話が盛り上がった本って読んでみたいと思うんですよね。普段本を読まなくても、『殺人うんこ』ってなんだろうと興味を持つかもしれないじゃないですか。
あとは、普段馴染みのないジャンルの本との出会いにもすごく良くて、去年個人賞に選んだ『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』は書店で買いました! 新しい本に触れるきっかけになるからタイトルってすごいなと思います。
――さて、12月20日に最新著作『まろやかな狂気2 夢眠ねむ遺言集』が発売になります。「タイトルだけ大賞」のノミネートにはちょっと間に合わなかったですね。
夢眠:そうなんです! 副題に「夢眠ねむ」って入っているから、もしかしたらノミネートまでいかなかったかもしれない。そこは残念でしたけど、ぜひ読んでほしいです。
――タイトルに注目すると、「遺言集」に触れないわけにはいきません。
夢眠:芸能界から引退するということで、今後も夢眠ねむという名前を使い続けはするんですけど、“アイドル・夢眠ねむ”としての最後の言葉というイメージで「遺言集」にしました。ただ、デザイナーさんや出版社の方と、「この本のジャンル、何になんだろう」という話になって、もしかしたら相続とか遺書の書き方コーナーとか、そういうところに入るかもって(笑)。
――本作は対談がメインなんですね。
夢眠:そうです! 前作の『まろやかな狂気』は『MARQUEE』という雑誌の連載をまとめたんですけど、今回は全部書き下ろし、撮り下ろしです。もふくちゃんと対談したり、でんぱ組.incのメンバー何人かと話したり。あとは、これまでの私の作品の写真も載っています。
装丁もこだわりました。緑色の色みが少しくすんでいると思うんですけど、それもこだわりも一つです。
――吉田豪さんとの対談は気になります。
夢眠:そうなんですよ! 豪さんのインタビューが入っているので、そこは仕掛けが入っているので…。読んでもらいたいんですけど、読み解かないでほしいです(笑)
――では最後に、ファンの皆様にメッセージをお願いします。
夢眠:アイドルとして長らく応援していただいて、本当にありがとうございました。
アイドルと芸能界は引退しますが、ずっと好きだった本屋さんを開くこと、そして「たぬきゅん」というキャラクターをプロデュースすることを頑張ろうと思っています。
今後、表には出ないようになると思いますが、「タイトルだけ大賞」にはどうしても出たいので(笑)、また呼ばれるように頑張ります。
ずっと注目していてください。宜しくお願いします!
(了)