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「時間をかけずに、楽して稼ぎたい」“ドケチ主婦”の副業にハンドメイドは適切か

提供: 新刊JP編集部

お昼の情報バラエティ番組「ヒルナンデス」内のコーナー、「ドケチ隊が行く」が炎上している。
このコーナーは「一円単位の節約に命を懸けるドケチ隊が、ある副業で儲かりまくっている主婦に弟子入り(番組サイトより抜粋)」するという内容のものだ。
 

「ドケチ隊が行く」炎上の理由

まず、筆者ハチマルはものづくりを趣味としているため、意見が偏る事があるかもしれない事は記しておきたい。
本コーナーはハンドメイド作品について、とくに原価の安さを強調した番組構成であったため、以前から炎上状態が続いていた。
この番組を見た一般の視聴者が、原価がかからないことを理由に、ハンドメイド作家に対して値下げを要求したケースもあるという。
そんな状態の中、今月7日にダメ押しで再び本コーナーが放送され、火に油を注ぐ事態となったのだ。
 
7日の放送では「生花アクセサリー」や「流木インテリア」が紹介されたが、生花は作家が自身で育てたもの、流木も作家が拾ってきたものなので、元手がかからないとされていた。
 

本当に材料費はタダなのか

お気づきかと思うが、番組内で材料費がかかっていないとされているものについても、コストは発生している。
例えば生花アクセサリーについて見てみよう。
 
生花アクセサリーは、本物の花にレジン(紫外線硬化樹脂のこと。液状だが紫外線に反応して固まる性質があるため、アクセサリーなどに活用することができる)を塗ったものをアクセサリーに仕立てたものだ。
 
番組では、ピアスを作る場合、アクセサリーパーツや、ビーズなどにしか材料費はかからないとされていた。
 
しかし、今回のメインとなる花を育てるには、当たり前だが種や土、水道代などがかかる。
家にあるもの=無料ではない。
また、初期費用としてレジンを硬化させるためのUVライトや工具の代金、材料を買いに行くための交通費、忘れてはならない作家本人の人件費など、見えないところでかかるお金は意外と多い。
 
さらに販売をする際には別途お金がかかる。
ネットで販売をするには販売サイトに支払う手数料(販売価格の10%程度)がかかるし、イベント出展の場合には出展料だけで一万円近くかかる場合もある。
例えばアートイベントとして有名なデザインフェスタの出展料は、一番安いブースで一日12,600円で、テーブルや椅子のレンタル料がさらに別途かかる。
そして商品のラッピング代やディスプレイに使う小物類、会場までの交通費も考えると、とても原価に近い値段で売る訳にはいかないのだ。
 

技術の習得にはお金がかかる

隠れた費用として、技術の習得にかかるお金がある。
もし本当に良いものを作って売りたいと思えば、確かな技術を持つ先生に支払うレッスン代が必要だ。
独学の場合でも書籍などの費用はかかる。
筆者はかれこれ5年以上、帽子職人の師匠の元で学ばせていただいているが、まだまだ力不足だ。良いものを作るためには、お金も時間もかかるのである。
 

楽して稼ぎたい主婦はハンドメイドをすべきでないのか

個人的には“楽して”稼ぎたいということであれば、ハンドメイドはあまりおすすめできない。その時間でパートに出た方が確実に稼げるだろう。
 
しかし、ハンドメイドで稼ぐ方法はあるように思う。
・オリジナリティのある作品を作り、ファンを獲得する
・ハイクオリティな作品で、欲しいと思わせる
・商品の撮影にこだわり、PRを上手にする
・技術を身につけ、教える側に回りレッスン料で稼ぐ
・日本的な作品を海外へ向けて販売するなど、売る場所を工夫する
・作家本人が有名になり、付加価値をつける
などが考えられる。

簡単ではないが、不可能ではない。
 

今回の騒動で個人的に思う事

「稼ぎたいからハンドメイドをしたい!」という人については、歓迎をしたいと思う。
筆者はハンドメイドが好きだ。
なので、どのような理由にせよ、ハンドメイドに興味をもってもらえたことは嬉しい。
結果、クオリティによっては稼げないかもしれないし、眠っていた才能が開花して人気作家に化けるかもしれない。
何事もやってみなければ分からない。入口はなんだって良いのだ。
 
ただ、「ハンドメイドは安く作れる」という誤った情報のもとに、ハンドメイド作品を「ぼったくり」だと誤解されてしまうことについては悲しく思う。
 
良いものを作ろうと思えば自然とかける材料費も高くなり、素人が考える以上の原価がかかっていることも少なくない。
「原価を引き合いに出して値引きを交渉してくる人は相手にしなければ良い」という意見も多く見かけたが、「安くしてほしい」という言葉には「あなたの作品は値段程の価値がない」という意味が含まれている。
「高い」と言われてしまえば、心が傷つくことは避けられない。
 
今回の騒動後、Twitter上に「#ハンドメイド界隈のテンション上げてく為に自分のイチオシ作品画像を貼ろう」というハッシュタグがついた投稿があふれた。
どの作品も作家の愛情がこもった素晴らしいものばかりだ。
今は原価と販売価格の差ばかりに目が行ってしまう方も、いつか作品そのものの良さに気づける日が来ると良いなと個人的に思う。
 
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ハチマル

本業はデザイナーだが、成り行きで記事を書くことに。
好きなジャンルは時代小説・手芸本。

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