「幸せになりたいのに、なぜか不幸に向かってしまう」その理由とは?
「あなたは幸せになりたいですか? それとも不幸になりたいですか?」
こう聞かれたら、ほとんどの人は「幸せになりたい」と答えるはずです。しかし、自分の人生について「幸せです」と言い切れる人はどのくらいいるでしょうか。
こころは幸せを求めているのに、なぜか不幸に向かってしまう。
「良い方向に向かわないのがこころのシステム」
こう話すのは、スリランカの上座仏教の長老であるアルボムッレ・スマナサーラ氏です。
嫌な思い出は忘れてしまい、人から優しくされたことだけを覚えていれば、人生は楽しいものになるはず。でも、私たちの「こころ」はそのようにはできていないと、スマナサーラ氏は述べます。
■真理に耳を傾けて、「だまされたがる」こころを理解する
ブッダが説いた教えをスマナサーラ氏が解説する『慈悲の瞑想〔フルバージョン〕』(サンガ刊)は、ある意味で“耳の痛い”一冊なのかもしれません。なぜなら、ブッダの教えは真理であり、その真理の中には、聞きたくないことや耳が痛いこともあるからです。
しかし、自分にとって耳の痛いことは向き合いたくないのが人間。自分に優しい言葉をかけてくれる人を信じたいと思うものですし、そちらの方向に向かってしまいがちです。
では、優しい言葉をかけてくれる人のことばかり聞いていたらどうなるのか?
端的に言うと、騙されます。
スマナサーラ氏は、世の中で「ご機嫌取り」がトレンドになっていると指摘します。でも仏教的にいえば「ご機嫌取りの内容を話すその人はインチキ」。そして、「あなたは正しい」とばかり言ってくる人は、詐欺師や商売をしたい人、人気が欲しい人だと述べます。
人間のこころは「だまされている状態」を望んでいます。
スマナサーラ氏は、その法則をまずしっかりと理解することが大切で、そうすれば落ち着いて生きていけるようになると説くのです。
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この『慈悲の瞑想〔フルバージョン〕』は、自分の含めたあらゆる生命の幸せを願う瞑想「慈悲の瞑想」の教えを説く一冊。巻末には「慈悲の瞑想」のフルバージョンが掲載されており、「生きとし生けるものが幸せでありますように」というフレーズも登場します。
私たち生命の「真理」が書かれている本書。その「真理」に逆らっているすべての生命は幸福になることはできないと、スマナサーラ氏はつづります。
「幸せになりたい」と強く思っているのに、なぜか幸せになれない。そんな人は、「慈悲の瞑想」に触れてみれば、その理由が自分の中でクリアになるかもしれません。
(新刊JP編集部)