【「本が好き!」レビュー】『絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか』更科功著
提供: 本が好き!昔、「たま」ってバンドがいて、ピテカントロプスになる日も~♪って歌ってたんだけど、この本のどこを読んでも出てこない。今は使われていなくて、ホモ・エレクトゥスって種の中に含まれているようだ。
「ホモ」という属で「エレクトゥス」という種小名からなるラテン語の学名。「ホモ」は人間「エレクトゥス」は直立したという形容詞。北京原人もジャワ原人も含まれる。ホモ・サピエンスもサピエンス(賢い)人間という意味。
やたらこのホモ~の人類が出てくるので、途中で頭の中ですっちゃかめっちゃかになってしまうが、単純に登場が新しい人類が古い人類から進化したという話ではないようなので、そこはまあまあ曖昧でも大して困らない。
ネアンデルタール人もホモ・ネアンデルターレンシスという学名。(ネアンデルターレンシスの意味は書いてなかったからわからない)
で、私たちホモ・サピエンスがネアン・デルタール人を絶滅に追いやったというのが多分これまでの定説だったと思うのだが、これは間違ってはいないけれども、正鵠を射ているわけでもないらしい。
ネアンデルタール人のほうがホモ・サピエンスより脳が大きかったということには驚いた。サピエンス(賢い)という形容詞がつく私たちのほうが頭がいいのかというと、一概には言えなくて、ネアンデルタール人のほうが頭が良かった可能性もあるらしい。絶滅しちゃったから、証明しようがないけど。そもそも脳の形が違うらしいので、比較は難しい。もしネアンデルタール人の脳が進化していたら、ホモ・サピエンスとはまるで違う能力を発揮していた可能性もある。
じゃあ、なんでネアンデルタール人が絶滅してしまったかというと、ホモ・サピエンスより脳が大きかったので、より多くの食料(カロリー)が必要だったんじゃないか、という仮説を著者は立てた。これまたびっくり。
スマホに例えると、やたらとアプリをインストールすると電力は食うし、アップデートでデータ量は消費するし、というのと同じ。ネアンデルタール人は大きい脳を活用するためにカロリーをホモ・サピエンスより摂取しなくてはならなかった。だから同じ環境で両者が生存競争をした場合、ホモ・サピエンスのほうがエネルギー消費が少ない分、生き残れた。
またホモ・サピエンスのほうが子供を多く産んだということもあるらしい。人間のように、その気になれば年子で出産できるという種は霊長類の中では多産のほうらしい。
そのような些細に思われる優劣が何千年や何万年と経つと、種の個体数にも差が出てくる。ということがホモ・サピエンスが生き残れた理由だ。
でもネアンデルタール人とホモ・サピエンスは交雑していた地域もあるらしいから、やっぱり近い種ではあるんだろう。
表紙の帯にある「ホモ・サピエンスがネアンデルタール人を殺した?」という疑問の答えは「殺したり食べたりしていたことあるけど、それはお互い様です」が正解。積極的に戦争をしかけたとかいうことではなく、生活環境が似ており活動範囲が近接した2つの種のうち、より環境の負荷に耐えられたほうが生き残ったということ。頭がいいほうが生き残ったというわけではない。
ネアンデルタール人とホモ・サピエンスに特化して感想を書いたけど、人類誕生と進化について基礎的な流れが押さえられているので、とてもわかりやすい。 中学生くらいからでも読めるんじゃないかな。
(レビュー:クロニスタ)
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