中小企業の販路拡大のカギ 展示会を活かすための絶対的ポイント(1)
新規顧客の獲得や販路の拡大を狙う企業にとって、業界各社が一堂に集う展示会は大きなチャンスとなりうる。
自ら集客することなく自社商品に関心を持っていることが予想できる人々と知り合うことができ、直接商品の魅力を伝えることができるからである。これはリソースが限られた中小企業にはありがたい。
しかし、ただ出展するだけでは後日のアポイントにつながらず、もちろん売上にもつながらない。交換しただけで役に立たない大量の名刺が残るだけである。
展示会で営業成果を出したければ、確固とした戦略が必要だ。今回はその点について『3秒で顧客をつかむ!コスト効果“3300%”の「展示会営業」術!』(ごま書房新社刊)の著者、清永健一氏にお話を聞いた。
■マネすると失敗する 展示会出展でお手本にしてはダメなブースの特徴
――清永さんは今回の本で、展示会を利用した営業手法を提唱されています。この手法は訪問や電話、ダイレクトメールといった一般的な営業手法と比べてどんな点が優れているのでしょうか。
清永:展示会の一番いいところは「見込み客のリストを作れる」という点です。通常、見込み客を作ろうと思ったら、それこそ飛び込みで営業をかけたり、電話をかけたり、ダイレクトメールを送ったり、ホームページやSNS、ブログで集客したりといった方法がメインになりますよね。
これはこれでいいのですが、特にウェブでの施策となると、効果が出るのはBtoCで直接消費者にアプローチする企業なんです。たとえば工作機械を工場に売るなどといったBtoBのビジネスをやっている企業がウェブで見込み客を作るのは難しい。そうなった時に展示会が有効になります。
展示会は優良な見込み客に出会いやすいんです。テーマが決まっていますから、来場者はそのテーマに関心がある人ですし、その中には役職が高くて決裁権があるような人も多くいます。そうした人と知り合って後の営業につなげられるという意味で、展示会は有効な営業手法なんです。
――確かに展示会は大きなものでは数万人規模の来場者がつめかけます。そこから自社の見込み客を一気に獲得できると考えると効率がいいですね。
清永:そうですね。もう一ついいところは、中小企業でも成果を出しやすいところです。やっぱり来場者は大手企業のブースを目当てにしてるんですよ。上手にやればその人たちを自社の見込み客として取り込むことができる。大手の集客力を使って自社の顧客を作れるので非常に効率がいい方法だといえます。ぼくはこのやり方をコバンザメ戦法と呼んでいます。
―― 一方で「単に出展するだけではうまくいかない」ということも書かれています。来場者をどう振り向かせるかという工夫が必要だというわけですが、あまりそういった工夫はされていないのが現状なのでしょうか。
清永:「毎年出展しているから」という惰性で出展している企業が大部分です。展示会にもよりますが、見ていて「ちゃんと考えているな」と思うブースは100社出展していたら1つか2つではないでしょうか。だからこそきちんと受注までの導線を考えて取り組めば成果が出るわけですが。
――私もいくつか展示会に行ったことがありますが、大きな企業ほどブースも大きく内装もきれいで、コンパニオンが迎えてくれたりしますし、お金がかかっているなという印象でした。
清永:確かに大企業のブースは広くてきれいですが、営業成果はそこでは決まりません。
大企業はお金をかけてきちんとしたブースを作るのですが、基本的にそこで受注をとろうとはあまり思っていません。テレビCMを打つのと同じ感覚で、広告宣伝費の一環で出ているだけのところがほとんどと考えた方がよいでしょう。展示会で成果を出そうと思ったら、そういう大企業の「きちんとやっているっぽく見える」ブースをお手本にすると失敗しやすいんです。
――タイトルにある“コスト効果3300%”の意味を教えていただきたいです。
清永:僕が展示会出展を手伝った大阪のITシステムベンダーさんで、200万円弱の出展料で半年後にその33倍の売上があった企業があるんです。その事例が象徴的だったのでタイトルに入れました。
――いったいどのようにそれほどの成果を出したのでしょうか。
清永:成果を決定づけたのは「特典」です。かといってノベルティのようなものではなく、次のアポに繋がりやすい特典をつけたんです。
その会社はIT関係のセキュリティツールが商材だったのですが、ブースに来て名刺を交換した人の会社を訪問して社内のセキュリティのレベルを無料で診断して差し上げるというサービスを特典にしたんです。「通常3万円かかるのですが、今回の展示会に限り先着●名様まで無料でやります。みなさん申し込まれますがどうしますか?」と言うと、ほとんどの人がこの特典に申し込みました。
この特典に申し込んだ先には、必ず次回アポが取れますし、その際の診断の結果を見て問題を解決する商品を提案できるというわけです。
――それは上手なやり方ですね。
清永:はい。出展のコンセプトから出展後のアポイントや受注までの流れをあらかじめ考えて当日を迎えるという発想が大事です。今回の本ではその一連のプロセスをすべて解説しています。
(後編につづく)