だれかに話したくなる本の話

「敬意なき介護」を変えた 民俗学者の取り組みとは

『介護民俗学という希望: 「すまいるほーむ」の物語』(新潮社刊)

転職などで異業種・異業界からやってきた人が、業界プロパーでは思いつかなかったアイデアを出して、組織に新しい風を入れることがある。

ただ、どの業界から来た人はどの業界と相性がいい、という傾向はあまりなく、その人の性格による部分も大きいだろう。つまるところ、上記のようなケミストリーが起きるのは偶然の要素が大きい。

『介護民俗学という希望: 「すまいるほーむ」の物語』(新潮社刊)の著者、六車由美さんは大学准教授から介護の世界に「転職」した変わり種。『神、人を喰う――人身御供の民俗学』でサントリー学芸賞を受賞した、れっきとした民俗学者である。

介護民俗学という希望: 「すまいるほーむ」の物語

介護民俗学という希望: 「すまいるほーむ」の物語

ここは沼津市のデイサービス施設「すまいるほーむ」。

デイルームや入浴介助の場で、ふと語られる記憶の数々。意外な戦争体験、昭和の恋バナ、心に沁みるエピソード。

多彩な物語が笑いと涙を呼び、豊かな時間が流れる。

聞き書きや思い出の味の再現、人生すごろくなどユニークな取り組みが問いかける、老いることの価値とは。深い気づきと新鮮な感動に満ちた一冊。

『介護民俗学へようこそ!』改題。