【「本が好き!」レビュー】『愛と分子:惹かれあう二人のケミストリー』菊水健史著
提供: 本が好き!生命体が生まれ、単細胞生物が誕生。「増殖」という機能を得て地球上に広がっていく。単細胞生物の数の増やし方は分裂だ。子孫は自分のコピー、つまりはクローンということになる。クローンは自分の分身なので子孫もすべて自分と同じ。自分が死んでも子孫は自分ということは、自分は永遠に生き続けることを意味する。そして、自分以外が存在しない。
生命体は自分のDNAを広げていく中で、さなざまな機能を得て、それを洗練させていった。そして、約10億年前に「性」が誕生することとなる。性の誕生により、生物は子孫を残すために異性との出会いが必須となった。そして、自分の遺伝子と相手の遺伝子を混ぜることにより、自分と異なる遺伝子を持った子孫を残すことになった。これにより、自分は永遠ではなくなった。
以上のことが本書を読み進める上での前提となっている。オスとメスに分かれた結果、メスは自分にとって有利だと思われるオスを選び、子孫を残そうとする。オスは自分の遺伝子を残すため、メスに受け入れてもらう為に努力する。数多くの生物のなかで繰り広げられているこの様な営みに、分子が大いに関わっているそうだ。
異性への嗜好性は、遺伝的なものから、経験の中で変化するものなど複雑なメカニズムによって生まれるそうだ。その中の一つに近親による交配を避けることとも関係し、なるべく自分と遠い遺伝子を持った個体を選択するというものがある。個人的に疑問に思ったのは、その割に「ヒト」の国際結婚は進んでいないのではないかと言うことだ。
本書には、子孫の残し方以外にも「ヒト」と「イヌ」との特別な絆についての解説があり興味深い。また、国立科学博物館に最近行ってきたこともあるが、まるで博物館の解説を読んでいるかのような楽しさがある。気軽に手に取り、写真のページを眺めていると良い気分転換にもなる。
(レビュー:プレガイ)
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