だれかに話したくなる本の話

繁盛する店は客をランク付けする 最短で利益を出すための分類法とは

どんなビジネスでも客が定着するかしないかが商売の先行きを左右する。思いつきで安売りセールを仕掛けても、一時は売上が出るかもしれないが継続的な収益の安定にはつながらない。

業種を問わず「繁盛店」と呼ばれる店や会社は、例外なく「リピーター」が存在する。そんな繁盛店をつくるための顧客の取り込み方を学べる一冊が『8割のお客様をリピーターにする「すごいお店」の秘密』(高井洋子著、KADOKAWA刊)だ。

■新規客よりもリピーターが重要な理由

「集客」と聞くと「新規顧客」が連想されがちだ。たしかに新規顧客の獲得も大事な戦略だが、利益アップにつながりやすいのは「リピーター」の方だと著者は述べている。

その理由を示すのが、「1:5の法則」と「5:25の法則」だ。

「1:5の法則」は、「新規客に販売するコストは、既存顧客に販売するコストの5倍かかる」という法則。「5:25の法則」は、「顧客離れを5%改善できれば、利益が最低でも25%改善される」という法則だ。

同じ粗利の会社やお店でも、販管費や売上原価がかさめば、利益は食い潰されてしまう。広告や宣伝、優秀な営業マンやスタッフを使うことで新規客獲得には大幅なコストがかかる。同じコストをかけるのであれば、既存客の維持にかけた方が利益はアップ、というわけだ。

■常連客を「伝道師」まで成長させる

本書で説かれている「リピーターをつくる」は、たびたび店を訪れて、商品を買ったりサービスを利用したりしてお金を支払ってくれる「常連客」をつくることとは少々違うニュアンスがある。

著者は、「常連客にも段階がある」と述べている。その段階とは「潜在顧客」「お客様」「顧客」「お得意様」「信者客」「伝道師」の6つだ。

「潜在顧客」は、まだニーズが顕在化していない未来のお客であり、購入のきっかけをつくってあげる必要がある段階だ。そこから初回来店をしてもらえれば「お客様」になる。

数あるお店からわざわざ自分の店を選んで二回目の来店をしてくれた客は、少なからず好意を寄せてくれている「顧客」だ。この段階では、初回とは差別化した対応をすることが望ましい。

三回目の来店は、ひとつの山場だ。対象の印象やイメージは三回会っただけでほぼ決まってしまうという。そのため、ここで好印象を残しておくことが肝要だ。ここを超えて、店、商品、サービスを信用・信頼してもらえれば、もはや他店や競合に目移りしない「信者客」になってもらえる。
そして、最後の「伝道師」の段階まで行くと、お客が「あの店はいい」と人を呼び込んでくれる状態になったり、頼まれていなくても新規客を連れてきてくれたりするようになる。

こうした「常連客の段階」を意識して、段階に応じた接客、サービス、戦略を打つことで、さらなる利益をつくる「リピーター」をつくることができるのだ。

■「商売」は「恋愛」と同じ?

著者は、日頃から「商売は恋愛に似ている」と言っているという。

学生時代、気になる異性にアプローチするために、相手の好みをそれとなく聞いたり相手に好かれるような振る舞いをしたりした経験はないだろうか。
それと同時に、自分の側も見た目、性格、趣味嗜好などで異性を選んでいたはずだ。

商売も同じことが言える。
「こういうお客さんにきてもらいたい」というターゲットを明確にし、そのターゲットに合った戦略を打つことが大切だ。

例えば、飲食店でオシャレな若者に来店してほしければ、店構え、インテリア、盛り付けにこだわる。高級志向の人たちに来店してほしければ、食材を厳選し、味に徹底的にこだわるだろう。

著者は、「商売は777(スリーセブン)が揃わなければ儲からない」と述べる。そのスリーセブンとは、「顧客ターゲット」「売り方」「商品」の三つだ。

恋愛で言えば、顧客ターゲットは好きな異性、売り方はアプローチの仕方、商品は自分ということになる。そして、商売における「リピーターをつくる」ということは、デートを重ね、信頼関係を築いていくことに近い。

商売の原点は、お客さんに喜んでもらうことだ。リピーターがつくれずに悩んでいる店舗経営者や企業は、一度、恋愛の視点で「どうすれば相手に好まれるか?」「どうアプローチすれば次のデート(来店)につなげられるか」と、相手が喜ぶような戦略を考えてみるといいかもしれない。

(ライター:大村 佑介)

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この記事のライター

大村佑介

大村佑介

1979年生まれ。未年・牡羊座のライター。演劇脚本、映像シナリオを学んだ後、ビジネス書籍のライターとして活動。好きなジャンルは行動経済学、心理学、雑学。無類の猫好きだが、犬によく懐かれる。

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