【「本が好き!」レビュー】『自分が信じていることを疑う勇気』長谷川 雅彬著
提供: 本が好き!※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。
起業家、凄腕トレーダー、人気俳優……世界で活躍し、目標を実現できる人々の共通点は、「自分が信じていることを疑う勇気」だった!スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグ、ショーン・パーカー…ブレイクスルーを起こし、未来を作り出す彼らと一般人との違いは生まれ持った才能でも環境の違いでもなく、「物事の見方」。視点を変えるために必要な、疑う勇気を身につける方法とは?
「経験」を疑う
そもそも私たちは、予定調和な世界に慣れすぎています。朝は何時に会社に行き、何時からミーティングをして、だいたい何時くらいに帰宅するといった生活をしていると「全ては自分たちでコントロールできる」と感じるようになってしまいます。初対面でのやり取りも大まかな流れが決まっていて、人々はそれに従っています。特に日本人は時間通りに物事が始まることにこだわりを持っています。1分程度の電車の遅れでも謝罪のアナウンスが入ったりします。「何でも予定をきっちり立てることができて当然」「先行きが分からないのはいい加減なこと」という認識は日常的に強化されていると言えます。
都心では電車の本数も多いし、数分間隔で電車が行き交う。なので雪や送電線のトラブルなどで遅延が出ると交通は麻痺しパニック状態に。こんな国日本だけだろう。しかし最初から完璧にわかることなどこの世には存在しません。むしろ確実、完璧なことがあったら疑ってかかった方が良い。私たちは無意識に予定通りに進むんだ方が良いと考えてしまいがちなのが問題なのです。
「二者択一」を疑う
アイディアを実現する際にも、こうした二元論は実現の可能性を狭めます。みじかな例を挙げれば、働き方です。仕事に満足がいかない場合、人々は「会社を辞める」か「起業する」という両極端な選択肢になりがちです。しかし、本当はそれ以外のオプションもあります。社費留学や部署移動が可能かもしれません。世の中には、白でも黒でもないことがほとんどです。目的地は同じでも、いろいろな行き方があります。どれが絶対に正しいなんてことはあり得ません。
僕は過去にこの二者択一的思考に陥り大損をしてしまった。統合失調症を患い、仕事に支障をきたすようになり、とりあえず職場から逃げるように退職しました。僕の中で辞めるか残るかの二者択一しか頭になかったからです。上司からはしばらく休んでと言われたが僕の頭にはその選択肢がなかった。今考えると、慣れた職場で継続して雇用してくれるのだから、しばらく休職してから復帰すれば、今みたいに無職の状態を強いられることはなかったかもしれない。転職した際も、病気が明るみに出るとすぐに解雇(研修期間中だったので)もしくは自主的に退職になってしまい、なかなか病気の理解を得られない状態に。今いる部署に不満があったら上司に相談し部署を異動してもらったり、起業するアイディアがあったなら、社内起業の提案をしてみれば自分のリスクを最小限に抑えた職を得ることができる。二元論で判断するとそれ以外の可能性を見失ってしまうのだ。
通勤時間から解放される
多くの人にとって毎朝の通勤ラッシュは心地の悪いものです。もしそれを解消したいのなら、いっそオフィスの近くに引っ越してみてください。東京であれば東京駅丸の内・八重洲エリアから徒歩圏内の日本橋や三越前の周辺には、住みやすいマンションが意外と沢山あります。そのエリアに住めば、満員電車からは解放されます。多少物価は高くなるでしょうが、通勤時の満員電車に乗らない分、より効率的に働いて多く稼げるようになるかもしれません。もっと言えば、いっそ通勤を辞めることだってアリです。アメリカでは年々遠隔地勤務の人の割合が増えており、2015年には全体の37%に達しています。最初から無理だと決めつけず、思い込みを一度疑ってみてください。とはいえ、自分が信じていることを疑うのは勇気がいることです。もし、「これまで信じてきたことが実は思い込みだった!」と気づいてしまえば、これまでの人生は何だったのかとアイデンティティクライシスを経験することも考えられます。しかし、実際のところ、常識が崩れても、それまでの人生が無意味になることはありません。むしろ、それまで見えていなかった無限の可能性に気づけます。そうやって見えた可能性を生かすために、蓄えた知識や経験を活用すれば良いのです。
僕は仕事を辞めてから10年以上が経つが、通勤ラッシュとは縁遠い生活をしています。まず電車に乗らないという選択肢もありだということ。普段は家にいることが多いし外出する際も、本屋、美容院、カフェ、歯医者や町医者などほとんどが徒歩圏内。唯一徒歩で行けないのが精神科だが3ヵ月に一度なのであまり気にならない。デイケアに通っていた時期もあったが体重増加と運動不足だったので、1時間ぐらい歩いて通っていた。今ではカフェと本屋がデイケア代わりに。
みなさんが漠然と信じていることは、もしかしたら他の選択肢で代替できるものかもしれません。何事も二元論で考えず、常に新しい可能性を見いだせることを頭の片隅に置いておけば、多様化が叫ばれる世の中があなたを受け入れてくれるでしょう。
(レビュー:sawady51)
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