「事実ではなく“対立の構造”が独り歩きする」 星野智幸『焔』があぶり出す日本の病巣(2)
ある種のフィクションは、その内容や質にかかわらず現実社会を映し出す。 風刺や未来への警鐘として、または励ましとしてなど、どのような意味合いとして受け取るかは読み手に委ねられるが、いずれにしても読後に自分の暮らす社会や自分の生きる世界を思い出さずにはいられない。そんな物語があるのだ。
小説家・星野智幸さんの最新作『焔(ほのお)』(新潮社刊)はまさしくそんな作品集。星野さんはどのような意思を持って、どこか陰鬱でまぎれもなく不寛容な日本社会を新作の舞台に選んだのか。そしてこの舞台は「未来の日本」なのか、それとも作家から見た「今の日本」なのか。
社会と創作を巡るそんな疑問を星野さんご本人にぶつけたインタビュー、後編となる今回は、星野さんが持つ社会への問題意識について語っていただいた。(インタビュー・記事/山田洋介)