【「本が好き!」レビュー】『文庫 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』ジャレド ダイアモンド著
提供: 本が好き!人間の生殖行動について他の動物や鳥類、そして時々魚類も含め生物という枠の中で比較しながら論じています。
しかし著者自身が冒頭で述べているように、倒錯した性行動について書いているわけではない。
非常に真面目に学術的にヒトと他の生物の生殖行動について検証しています。
読んだ感想としては、人間ってけっこう本能の動物なんだなってことかな。
ヒトの繁殖行動が変わっている点としては、まず排卵期を隠しているということだ。
犬猫にさかりの時期があるのと同じく、人間に近いと言われる類人猿でも排卵の時期にはメスはすぐにそれとわかるサインを出す。
ようは妊娠に繋がらないような無駄な性行動はしないということだね。
繁殖を目的としない性行動が多いって自然界では異常だそうです。
集団生活をしていて自分の遺伝子を持っていない子供を排除するオスの本能をごまかすために、メスは排卵時期を隠して群れの中のオスに自分が父親かもしれないという可能性を残すことで子供を守っているという説もあり。
そして閉経があるのも変わっているらしい。
ヒトも含めて生殖行動はすべて、自分の遺伝子を残すという本能に基づいている。
魚類では産む卵の数を増やすことでそれに対応している。
ネズミなどは自分の身体のメンテナンスに費やす能力を減らしてまで生殖へエネルギーを使う。
つまり寿命は短いけど子沢山ってことですね。
わかりやすく鳥類を例にして説明してあったけれど、出産と子供の育成に伴うエネルギーと生殖の成功率もしくはオスメスの遭遇率の関係でそれぞれの種の子育ての仕方が変わっていく。
鳥では生まれてくる雛の成長度合いに応じて、母鳥だけで育てるか稀に父鳥が子育てするか、もしくは両親で子育てに携わるかが変わってくるそうです。
基本的には両親で子育てする種類の鳥でも、より多く確実に自分の遺伝子を残すために他のカップルのメスを寝取ったり本命とは別に2号さんを作ったりしている。
メスもまた自分の雛を育てるためにはより強くていい餌場を持つオスを得ようとする。
このあたりがまさしく人間なんだよね。
そして妊娠と子育てにかける時間が長いためによりオスの協力が必要なヒトだからこそ、他の動物と違った形の性行動が培われたと論証していく。
セルフレプリケーションという一点のみを究極の目的としてヒトも含めた生物の繁殖戦略を見ていくことができた。
(レビュー:DB)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」