【「本が好き!」レビュー】『人魚の眠る家』東野圭吾著
提供: 本が好き!愛する我が子が不幸な事故で植物状態になってしまったら、脳死判定を受けられるか。
愛の冷めた夫婦は、娘の受験が終われば離婚することを決めていた。
けれど、受験を前に、娘がプールでの事故で植物状態になってしまう。
涙に暮れながらの脳死判定の最中、娘の手が微かに動いたことに、母親は希望を見出すが・・・・・・
健康な臓器を待ち望む子供がいるとわかっていても、温かい体温を保つ我が子の死を受け入れられない母心は痛いほどわかるし、奇跡を願って出来得る限りのことを娘にしてあげたいと思う心情も理解できる。
経済力が許すなら、機械を使って娘の成長を促すようなことをしても、それを「倫理観に欠ける」と責める権利は誰にもないようにも思う。
けれど、その価値観を共有できない人がいることも当然だと思う。
作中、母親の行為はどんどんエスカレートしていき、その鬼気迫る状態に恐怖を覚えた瞬間もあった。
けれどそんな彼女の言った「娘の為に狂えるのは母親だけ」という言葉に、妙に納得してしまった。
母の愛とは、こんなにも大きく深いものなんだろうか。
これは非常に難しい問題だし、答えは一つではないように思う。
だからこそ、ベストセラー作家である東野圭吾が書くことに、大きな意味があるのだと思う。
(レビュー:マック)
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