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【「本が好き!」レビュー】『風と共に去りぬ 第1巻 (新潮文庫)』マーガレット ミッチェル著

提供: 本が好き!

さて、知らぬ者はいないであろう風のタラのスカーレットをどうレビューすべきなのだろう。
名作の新訳を出す目的はなんだろう。
余りにも古くなって今の時代の読者には読みにくくなった言い回しを直すため?
時代の経過とともに、昔の常識が忘れられて、説明が必要になった固有名詞が増えたため?
前任者の訳版を読んでいないため、比較することができないが、この新訳版は確かに物凄く読みやすかった。
特に感じたのは、地の文におけるスカーレットに対する手厳しさだ。
曰く、回転は速いが教養はなく、物事の分析には向かない頭。
曰く、彼女の恋心に込められているのは虚栄心が大半で優しい心などほんの少ししかない。などなど。
この物語が多くの読者に受け入れられたのは、この筆者の目の冷たさ故だろう。
スカーレットに共感するのは難しい。感情的にも、倫理的にも。
もし、筆者がスカーレットに同情的であったり支持的であったら、読者はドン引きしてしまっただろう。しかし、スカーレットの頓狂な言動に筆者が冷静であるから、というより批評的であるから、読者は安心して読んでいけるのだ。
また、読んでみると如何に映画が原作に忠実に制作されていたかがわかった。しかし、描き切れなかった部分はある。それは、例えば1巻ではスカーレットの父母の物語だ。
一代でタラを手に入れた、アイルランド移民一世の粗野な父、フランス系の南部の名家の娘であった母。余りに不釣り合いなこの二人の結婚には何があったのか。
この両極端な両親の血が、スカーレットという溶鉱炉の中で渦を巻いているのである。

さ、そろそろ文句に行こうか。
訳者が斬新な訳で有名な鴻巣さんだから嫌な予感はしていたが、特にスカーレットのセリフなどにあんまりな言葉も散見された。
スカーレットによるメラニーの描写に、「ダサい」はなかろう。垢抜けないとか野暮ったいとか言ってくれ。
「モテる」「イケてる」「ウザい」とかの半カタカナ語もあまり使わないでほしい。
確かに「モテる」スカーレットにとって「イケ」ていない求婚者どもは最高に「ウザい」のだろうが。
「アシュリが私を好きなのは間違いないんだし!」……て、だし!って(苦笑)。
ミード先生の、「病院基金ためのマル秘企画を用意しとるんだが」のマル秘も違和感が拭えない。

いやいや文句で終わっちゃいかん。一応内容に触れておこう。
一巻は、アシュリへの恋破れたスカーレットが当て付けに友人の恋人を奪って結婚し、南北戦争が勃発してあっという間に未亡人になり、子供を一人産んだが全く愛情が持てずむしゃくしゃしてアトランタに出てきて、喪中の身ながらレット・バトラーと踊り狂って社交界の顰蹙をかう、というところまで。
以下続刊

第二巻
第三巻
第四巻
第五巻

(レビュー:あかつき

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『風と共に去りぬ 第1巻 (新潮文庫) 』

風と共に去りぬ 第1巻 (新潮文庫)

小説・映画で世界を席巻した永遠のベストセラーが新訳で蘇る!

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