2017年本屋大賞受賞 『蜜蜂と遠雷』恩田陸のこだわりがスゴイ!
2017年本屋大賞が、4月11日夜に発表され、恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎刊)が受賞した。同作は第156回直木賞も受賞しており、今回の受賞とあわせると「二冠」となる。
『蜜蜂と遠雷』は、ある国際ピアノコンクールを最初から最後まで書ききった大作。才能という定義しがたいものに、「優劣」という形で決着がついてしまうコンクールという場でしのぎを削る、ピアニストたちの邂逅と葛藤、成長を描いている。
以前、恩田さんが新刊JPのインタビューで語っていたお話によると、この作品は構想から完成まで、実に12年という長い時間を要したという。
登場人物たちそれぞれの一次予選から本選までの演奏プログラムを作るのにはすごく時間がかかりました。とにかく曲を聴きましたし、曲と曲の組み合わせや流れもあるので、実際のコンクールのプログラムを参考にしたりもしました。(新刊JP ベストセラーズインタビューより)
と語り、実際に浜松国際ピアノコンクールに通い詰めるなど、物語の細部へのこだわり方は半端ではない。それだけに、コンクールの雰囲気や音楽家たちの会話など、作品世界のリアリティは圧倒的だ。
そして、何よりも出色なのは、音楽を文章で見事に再現した表現力だ。この本を読んだ人は、誰もが一度は耳にしたことのあるクラシックの名曲たちが、実に表情に富んでいて、豊かなイメージを喚起させうるものだということに驚くのではないか。
才気あふれる登場人物たちの誰がコンクールで栄冠をつかむのか。それはこの作品の見どころには違いない。しかし、『蜜蜂と遠雷』にはもっと別の魅力があるということも、ここでは強調しておきたいのだ。
(新刊JP編集部・山田洋介)