だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『本を読む人だけが手にするもの』藤原和博著

提供: 本が好き!

誰もが子供の頃に耳にしたフレーズ「本を読みなさい!」。
でも、なんで本を読まなきゃならないのかは誰も説明してくれなかったw
ウチの親なら「頭がよくなる」とか「字を覚える」とか眉唾ものの理由を
ごにょごにょ言ってたけど、子供のアタシは納得できずに読書からは
縁遠い子供時代を過ごしてしまった。

もちろん学校でも時間割の中に「図書」の時間もあったし、クラス内にも
学級文庫さえあった。読む機会はたくさんあったのに、子供って強制されると
益々読まなくて、アタシは典型的なそんなアマノジャク子だった。

でもクラスメートには本好きな子はいて、ふと見るといつも本を開いてる。
そんな子は確かに優秀だったし「本を読めば頭がよくなる」ってホントかも!と
実際に手に取って読んでみたところで、全然頭に入ってこなかった。
それ以後は、流行の推理小説とかブームになってる本を手に取ることはあっても
「本を読む」習慣は身につかず、大の大人になってしまった。

アタシの読書のきっかけは、2011年の震災あたりじゃなかっただろうか。
何もかもが自粛ムードでテレビからは震災情報が流れて、哀しい話題は
無関係なアタシの気持ちさえ、沈めていく悪循環を起こし、テレビのスイッチを
OFFって暇を持て余し、本を手に取った、そんなカンジだった。

手にする本の大半が小説。実生活には何も役に立たないエンタメ小説も
知らないことを教えてくれる。ビジネス書やハウツー本のような実用書は
苦手意識が強くてなかなか手が出しづらいけど、案外読んでみると面白かったりする。

『本を読む人だけが手にするもの』と題された本書では
21世紀の現在を成熟社会と位置づけ、本を読む人と読まない人に二分される
階層社会になりつつあるという警告を発する。そこから本を読む事のメリットや本質
著者の体験談、読書することの意義を懇切丁寧に解説してくれる。

個人的には、自分の読書熱は「退屈からの現実逃避」と考えていたけど
知らず知らずのうちに著者の言う読書を行っていて、改めて合点する。

本は最初から最後まできちんと読まなきゃいけないワケじゃないし
ツマラナそうな本も読んでみなきゃわからない。著者や出版社の思惑を忖度せず
自分勝手に取捨選択しながら本を読む、すなわち「乱読」で良い!と納得できる。

一冊の本の裏側には著者の膨大な取材による知識、著者の経験や
知識の一端に触れることで疑似体験をさせてもらえる。
確かに、それまで知らなかった事に合点がいくことの気持ちよさは
本を読むようになって味わう清々しさ。
この清々しさを誰かと分かち合いたい、忘れたくないという欲求が
こうしてweb上にアウトプットする事で吐き出している。

本好きの集まる当サイトに登録したのも、そうした人たちの読書体験を覗いて
みたいという好奇心と、それを突き動かす本を知りたかったから。

そして自身の書いた吐き出した感想も登録しているわけだけど
読み終えて、記憶の新鮮なうちにダダダーーーっと入力しておきながら
しばらく経って読み返すと「へ?それはちょっと違うよね」と自らの感想文に
ツッコミを入れては書き直していたりする。

タイトルから、何が手に入るんだろう?と読み始めたが、すでに「本を読む人」の
アタシは、改めて自分の読書に対する価値観に合点がいく内容だった。
ただ本を読む習慣がない人が、この本を読むかどうかは疑問だけど
情報が溢れかえる21世紀だからこそ、本を読む事の意味や意義、大切さは
かの米国大統領選挙を見ていても、妙に腑に落ちる。

一度知りえた情報を自分の中で一回揉む、それを自分がどう理解して
どう発信できるかを頭で巡らせることが、成熟社会では必要とされている。
あらかた答えの揃った世の中で、答えの出ない問題が山積している今を生き抜くために
読書はひとつの手段にもなり得るという気がしている。

(レビュー:chiezo

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

本が好き!
『本を読む人だけが手にするもの』

本を読む人だけが手にするもの

あなたは「なんで、本を読んだほうがいいのか?」という質問に答えられますか? もし答えに詰まるのなら、一読の価値ありな一冊です。

この記事のライター

本が好き!

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