だれかに話したくなる本の話

オーディオブックは日本に定着するか? 出版・ラジオ関係者が語る音声コンテンツの近未来

4月13日、東京ミッドタウンにて「第6回オーディオブックアワード」が開催された。
これは、株式会社オトバンクが運営するオーディオブック配信サービスFeBeのユーザー投票によって選ばれたオーディオブック作品を表彰するという式典。会場にはオーディオブックやオトバンクに縁のある関係者が集まった。

式典の冒頭では、オトバンク・代表取締役会長の上田渉氏が学生の頃から付き合いがあるという、岩波書店・代表取締役社長の岡本厚氏が登壇。「これまで『思い出のマーニー』や『星の王子さま』など、児童文学作品を中心にオーディオブック化してきた。しかし、これからは新書分野のオーディオブック化にも積極的に取り組んでいきたい」と語った。

このようにオーディオブックのコンテンツが多様化していけば、ユーザー層は拡大するだろう。そして、そのような変化に伴い、書籍にかかわらず、様々なものが「オーディオブック」になり得るのではないか。

その可能性を示したのは、ビジネス書部門大賞を受賞した『嫌われる勇気』の担当編集者、柿内芳文氏だ。

「この本は“哲人と青年の対話”という形式をとっています。そして実際、執筆者である古賀さんがアドラー心理学の大家である岸見さんとの間で、何十時間にもわたる刺激的な対話を繰り返しながら作っていきました。その意味では、本の内容とほぼ同じようなやりとりがなされていたわけです。
おそらく他のビジネス書をつくる過程でも、似たような光景が繰り広げられているはず。そこで今後は是非、“打ち合わせの様子を録ってオーディオブックにする”ということをやってみるのも面白いのではないでしょうか」


クリエイティブな打ち合わせはそれ自体がコンテンツになるはずだ。柿内氏が受賞あいさつで述べた言葉は、新しいオーディオブックの可能性に目を向けさせるものだった。

また、今回の式典ではラジオ関係者が登壇するシーンも。TBSラジオのプロデューサーである池田卓生氏が、この春からの新番組『伊集院光とらじおと』と連動したコンテンツをFeBeで定期配信する取り組みを始めたことに触れ、「音声コンテンツの有料化に向けた新たな取組み」と意気込み、東京FM系列のシステム会社・ジグノシステムジャパンの高井礼央氏は、現在、オトバンクと共同で百田直樹著『永遠のゼロ』のオーディオドラマを制作中、近々にリリース予定であることを公表した。

閉会の挨拶として、オトバンク・代表取締役社長の久保田裕也氏は「すでにほぼ準備ができているもの、現在準備中のものも含め、これから色々とリリースする予定です」と語り、オーディオブックのこれからの展開を期待させるイベントとなった。
(新刊JP編集部)