だれかに話したくなる本の話

大江健三郎『水死』がブッカー国際賞にノミネート

世界的に知られているイギリスの文学賞「ブッカー国際賞」の候補作に、日本の大江健三郎氏の『水死』(翻訳版のタイトルは「Death by Water」)(講談社刊)がノミネートされた。

 ノーベル文学賞受賞者として知られる大江氏だが、同賞へのノミネートは初めてとなる。
 
 『水死』は、大江氏自身を模した老作家である主人公「長江古義人」の父を巡る物語。終戦の夏、洪水の川に船出して水死した父について、母が残した「赤革のトランク」を手がかりにひも解いていく。

 他のノミネート作品は、オルハン・パムク(トルコ)の「A Strangeness in My Mind」、エレナ・フェランテ(イタリア)の「The Story of the Lost Child」、マリー・ンディアイ(フランス)の「Ladivine」など13作品。世界的に評価の高い作家の作品が並ぶなか、大江氏の受賞があるのか注目したい。

 「ブッカー国際賞」は1969年から続くブッカー賞の国際部門として2005年に創設。イギリスおよび以外の国の文学作品の中からもっともすぐれたものに贈られ、50000ポンドの賞金が作者と翻訳者に等分に与えられる。

 過去にはアリス・マンロー(カナダ)や、フィリップ・ロス(アメリカ)などが受賞。
 今回の受賞作は5月16日に発表される。
(新刊JP編集部・山田洋介)

ブッカー賞公式サイト:http://themanbookerprize.com/news/man-booker-international-prize-2016-longlist-announced

水死

水死

終戦の夏、父はなぜ洪水の川に船出したのか?母が遺した「赤革のトランク」には、父親関係の資料が詰まっているはず。それらを手がかりに、父のことを小説に書こうとする作家・長江古義人。過去を持つ若い劇団女優との協同作業を通じて、自らの精神の源流としての「深くて暗いニッポン人感覚」を突きつけられる長江―。そして、やがて避けようもなく訪れる、壮絶で胸を打つクライマックス。初めて書かれる父の肖像と水死。「父」の死の真相と自らの暗部に迫る話題作です。母が保管していたトランクを開ける時がきた。そこには父の秘密が隠されているー。父の死の真相とは? 小説家の精神の暗い源流とは? そして予想を覆す最終章です。

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山田洋介

1983年生まれのライター・編集者。使用言語は英・西・亜。インタビューを多く手掛ける。得意ジャンルは海外文学、中東情勢、郵政史、諜報史、野球、料理、洗濯、トイレ掃除、ゴミ出し。

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