だれかに話したくなる本の話

「歯科医は医師より下」か?気になる社会的地位と年収は?

風邪をひいた時にかかる内科医院も、歯が痛い時に行く歯科医院も、生きていくうえでは欠かせない存在だ。生まれてから一度も医師や歯科医のお世話になったことがないという人はほとんどいないのではないか。

一般の人々からすると、医師も歯科医も尊敬の対象だが、医療の世界ではそうでもないらしい。『やっぱり、歯科医って素晴らしい!!』 (奥原利樹著、ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)によると、両者には明らかに上下関係が存在していて、「医学部合格は優秀、歯学部は二番手、もしくは都落ち」、「歯学部は医学部の滑り止め」という構図が長年はびこっているのだという。

◾️歯学部生がコンプレックスを抱えやすい理由

この偏見のために、もともと歯科医を目指して、晴れて歯学部に合格した人までが、医学部へのコンプレックスにとらわれやすい現状が本書では指摘されている。 歯科医は医学部に合格できなかったから就く職業ではないし、ましてや医師になれなかった落ちこぼれでもない。両者は共に社会に必要な存在で、しかもその仕事内容はまったく別物だ。上下をつけることはナンセンスである。

では、なぜこんな偏見がはびこるようになったのか。そこには日本の偏差値偏重教育や、医学部への過度なエリート視の弊害が垣間見える。

日本にはいまだに「医学部に行く人は一番頭がいい」という考えが根強く残っている。実際、大学受験において医学部の偏差値は高く、進学校でトップクラスの成績の生徒には、進路指導で「医学部を目指してはどうか」と提案される。メディアでは「医学部合格高校ランキング」などと銘打って、ひたすらに医学部を持ち上げる。そこには決して「歯学部」は出てこない。歯学部も医学部と同様に優秀な生徒が集まる学部にもかかわらず、である。

◾️アメリカでは医師より歯科医の方が人気

医師に負けず劣らず、歯科医も学生が目指すに値する魅力的な職業だ。高度な知識と技術を必要とし、患者の人生への貢献度も高い。

実際、アメリカでは歯科医の社会的地位は高い。職業ランキングや年収ランキングでは、矯正歯科医や一般歯科医が医師よりも上に位置している。受験でも歯学部は小学校から高校まで全教科においてトップレベルでないと入学できない超難関である。本書によると、これは台湾でも同様なのだとか。「医学部偏重」は日本特有の価値観であり、海外に目をやると事情はまったく異なる。

また、収入も決して医師に劣っているわけではない。歯学部卒業後、1年間の研修を終えて勤務医として勤めた場合の月給は25万円前後。その後はその人の成長度にもよるが、概ね25万円に加えて、勤務年数×10万円ほどが月給の目安となるそう。実力があるベテランの勤務医であれば年収1000万円以上稼ぐ人もいる。

そして、開業した方がお金を稼げるのは医師も歯科医も同じ。開業医となると歯科医としての技術だけでなく経営能力やコミュニケーション能力も収入に直結するが、経営が軌道に乗った歯科医師であれば年収3000万円以上になる可能性もある。

患者の生活への貢献度も社会的地位も、そして収入も、歯科医師は医師に何かが劣っているわけではないのだ。

本書は歯科医という職業の素晴らしさを発信することで、歯科医を志す人を勇気づけていく一方で、「『医者になれないから歯医者』程度の志であれば、歯科医になるのはやめたほうがいい」とも説いている。患者と真摯に向き合うことの大切さは、医師も歯科医も同じ。劣等感を持ったまま歯科医になったのでは、歯科医という仕事のすばらしさに気づくことができず、仕事上の困難に対して言い訳ばかり出てくるようになってしまう。

「これが自分の天職」と誇りを持って歯科医を続けている著者の言葉は、歯学部を目指してる人や、医学部進学に挫折して歯学部に入った人、そして現役歯科医の心を揺さぶるはずだ。

やっぱり、歯科医って素晴らしい!!

やっぱり、歯科医って素晴らしい!!

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