読むだけでモヤモヤした感情が楽になる ストレスフルな現代人に必須の一冊
これまでまあまあうまくいっていたやり方を変えたり、自分を周りにそれとなく合わせたり、大成功より「失敗しないこと」を優先してしまったり、といった性質を私たちは多かれ少なかれ持っている。
変化を嫌い、失敗を恐れ、集団に埋没する。これらは「VUCA時代」と呼ばれる現代を生き抜くために必要な資質とは正反対である。しかし、私たちの脳は、どうやらこういうクセを持っているらしい。
『脳マネジメント 脳を味方にして独自性と創造性を発揮する技術』(秋間早苗著、クロスメディア・パブリッシング刊)はこうした脳の性質を明らかにしたうえで、その性質を利用しつつ、変化が速く予想が難しい時代を軽やかに生きる秘訣を授けてくれる。今回は著者の秋間早苗さんに、現代と現代に生きる人間の特徴と、これから必要とされる変化について教えていただいた。その後編をお届けする。
■脳の性質に注目することで自分の気持ちが扱いやすくなる
――物事をポジティブに考えたり、一人一人の違いを認めたり、足りないところより長所に目を向けたり、といったことの大切さはさまざまな本で説かれています。ただ、「それって具体的にどうやるの?」という疑問が解決されないことも多い印象です。
秋間:私自身、そういったことが書かれた本をたくさん読んできて、時に勇気づけられてきたのですが、一方でそういった本に書かれているように「意識を変えましょう」「考え方を変えましょう」と言われても、具体的にどうやるのかわからなかったんですよね。
――そうなんですよ。方法論にまで踏み込んでないことが多いんです。
秋間:わかったような気にはなるんですけど、それで毎日の習慣が変わるかというと、やり方がわからない以上変えようがなかったりしたので、どうすればそれぞれが長所を認め合ったり、物事を決めつけずに考えられるようになるのかという方法のところではしごが足りない気がしていました。
この本はこの問いへのアンサーとして書いたところがあって、脳の認知について、「外部からの刺激への反応」にスポットライトを当てています。たとえば何か嫌なことがあった時に「何が嫌だと感じたのか」について掘り下げていくことで、「自分はこういう言葉に対してこういうイメージを持っているからイライラしたんだな」という構造が見えてくると、自分の感情を扱いやすくなります。
私自身がこのアプローチでずいぶん楽になりましたし、私がこれまでにこのやり方をお伝えしてきた方々からも肯定的なご意見をいただいたので、本という形で多くの方にお伝えしたいと思ったんです。
――「VUCA時代」のお話にもありましたが、現代は先行きを予想するのが難しく、大多数の人の考えが一致するような正解もなく、誰にとっても不安を感じやすい時代だと思います。この時代に活躍できる人、楽しく生きられる人の条件についてお考えをお聞きしたいです。
秋間:自分の中に不足している部分、自分にないものではなく、あるものや長所に目を向けられることというのが一つあります。あれがないこれがないと考えるだけで不安になるものですし、自分で自分を委縮させるような言葉が出てしてしまったりします。、そこで、もし自分がそんな状態になっていたら、気づいて切り替えられることが大事だと思います。
もう一つは自分のコンフォートゾーンから出られることです。初めてのことに挑戦したり、知らないことをやってみたりする時って、誰でも怖いじゃないですか。でもその怖さは自分のせいではないですし、ましてやその行動が間違いだからでもない。挑戦っていうのはそういう恐怖を伴うものなんです。そういうこと全体を知っておくと、慣れ親しんだコンフォートゾーンから出て挑戦しやすくなるはずです。
付け加えるなら、誰かのマネをしたり、「こういうものがすばらしいんだ」という固定観念を持ったままだとこれからの時代はとても生きづらいものになると思います。誰かのマネをしたり、既存の価値観に囚われるのではなく「自分はこれが好き」「自分はこれが心地いい」という自分ならではのものを持っていただくためにも、まずは自分のことをよく知ることが大切だと思いますね。
――仕事でマネジメントに関わる方が読んでもためになる本だと思いました。リーダーやマネジメント層の方向けに本書の使い方についてアドバイスをいただきたいです。
秋間:まずは自分のチームや組織の現状把握から始めていただきたいと思います。「こうした方がいい」という情報が溢れている時代で、どうしても自分のチームが進むべき方向について迷いが出やすいのではないかと思います。リーダーの方がたくさん立っている旗に踊らされず、自分たちが本当に追うべき旗を見極めるために、この本は役立つのではないかと思っています。
また、チームに誰かを責めている人や自信を持てない人、チャレンジできない人がいたら、脳の性質の話をすることで「それはあなたのせいじゃないよ」というメッセージを伝えることができます。コミュニケーションのクッションとして、今回の本で書いている脳の話は有効なのではないでしょうか。
――最後に読者の方々にメッセージをお願いいたします。
秋間:この本が「なんで自分ばかりこんな目に遭うんだろう」とか「このままじゃダメなのはわかっているのに、どうしていいかわからない」「どうしてわかってくれないんだろう」とモヤモヤした気持ちを抱えている人の役に立てばいいなと思っています。
そうやって悩んだり苦しんだりすること自体、いろんなことを自分事として捉えられるからこそなんです。その心の火を消さないように、ぜひ脳の性質やクセというものに注目していただきたいです。「どうしようもない」から「何かできることがあるかも」に考えをシフトするきっかけになってくれたらうれしいです。