不安を増幅させ生きづらさを感じさせる「脳のクセ」とは?
「正解」がなく、変化が速く、先を予測するのが難しい。
私たちが生きる現代はこんな風に評される。そして、そんな時代で生きていくために、考え方や生き方、行動様式を変えなければならないとも言われる。
時代が変われば必要とされる能力や資質も変わる。その変化についていくことが求められているのはわかるのだが、どうやって変わっていけばいいのかわからない。だから、私たちの多くは漠然とした不安を抱えて生きている。
「正解がない」と言われても、何もかもがうまくいく正解がどこかにあるのではないか、と考えてしまうものだし、物事がうまくいかなければ、自分がどこかでミスを犯したのだと考えてしまったり、ついつい周りと合わせてしまうのが人間というもの。だが、実はそれは人間の脳が本来的に持っている「クセ」によるものなのだそう。
私たちを支配し、振り回す「脳のクセ」から自由になり、逆に脳の手綱を自らが握ることでVUCA時代を生き抜くことができる。『脳マネジメント 脳を味方にして独自性と創造性を発揮する技術』(秋間早苗著、クロスメディア・パブリッシング刊)はそんなことを教えてくれる一冊だ。
■現代人の「生きにくさ」の正体とは
本書でいう「脳のクセ」とは
・具体的な変化を厭う
・レッテルを貼って理解する
・物事の良し悪しをジャッジする
・他人事にしたり、なかったことにする
・違うことより、同じことに安心する
など。これらはいずれも長い歴史の過程で人間社会が身につけてきた性質なのだが、社会の変化に適応し、ダイバーシティやインクルーシビティが求められる現代の潮流とは逆行する。これは言い換えると、人類が時間をかけて身につけてきた性質を変えなければいけないほどの変化が現代では起こっているのだともいえる。これこそが、多くの人が今生きづらさを感じている理由なのだ。
■脳には「省エネ」を好むクセがある##
もう少し細かく見ていこう。たとえば「レッテルを貼って理解する」というのは「これは、こういうもの」という先入観を持って物事を判断しようとする脳の性質である。これは言い換えれば「時間とエネルギーをかけて、個々の違いを丁寧に扱おうとしない」ということでもあり、「省エネ」を好む脳の性質を表している。これと同様に「具体的な変化を厭う」「物事の良し悪しをジャッジする」「他人事にしたり、なかったことにする」「違うことより、同じことに安心する」も、やはり脳の省エネ傾向を示しているのだという。
こうした脳のクセに振り回されていると、人生から主体性や創造性が失われてしまう。そうならないために、本書では
・気づく:脳のクセを理解し、自分の内側への解像度を高める
・働きかける:自己理解を深めたうえで、自分自身を望ましい状態に向ける適切な働きかけをしていく
・体現する:物事に主体性を持って現実創造していくために、自分ならではの力を発揮する
という3つのアプローチを繰り返していくことを推奨している。
最初のステップである「気づく」については、普段意識せずに出てしまう「口ぐせ」に注目してみるのがいい。
「あれがない、これがない」
「どうせ〇〇だから」
「これで合ってるかな」
「間違えないようにしなきゃ」
「なんで私だけ」
こんな言葉が日常的に口から出ていたり、頭の中に浮かんでいるのなら、それはマインドセットが脳のクセに支配されているサインだと言える。このマインドを変えていく「働きかけ」「体現」とは具体的にどのようなものなのかについて、本書は脳の性質についての解説を交えて解き明かしていく。
脳のクセを知り、そのクセから自由になり、逆にそのクセを上手に利用することが、本書の目指すゴール。それが実現できたら、正解のない不確実性の時代を自分らしく生きられるようになるはずだ。本書は現代を生きるために必読のガイドブックである。