だれかに話したくなる本の話

投資家が実践 日常生活の風景からチャンス銘柄を察知する方法

賃金が思うように上がらず、将来が不安、となると必然的に目が行くのが「投資」である。折しも「つみたてNISA」、「新NISA」がスタートしたことで、投資はこれまでよりもはるかに身近になっている。

しかし、投資とは常に損をする可能性をはらむもの。それを考えるとなかなか始められず、先延ばしにしている人も多いのではないか。『そろそろ投資をはじめたい。』(渡部清二著、サンマーク出版刊)は投資をためらう人の背中を押す一冊だ。

正体のわからない不安におびえるくらいなら、この本を読んでその不安の正体をつきとめるべきだ。今回は著者の渡部清二さんにお話をうかがい、渡部さんが今こそ投資を始めるタイミングだと考える理由や株式投資の注意点、情報収集源とその活用などについて語っていただいた。その後編をお届けする。

渡部清二さんインタビュー前編を読む

■投資家は日常生活の風景から投資銘柄を察知する

――投資家の方が世の中をどう見ているかについて書かれている第二章がとてもおもしろかったです。特に日常から得られる情報の多さに驚きました。「値上がりしていても人が集まるもの」「どこにでもあるもの」などから株価が上がる可能性の高い企業を見つけたとして、そこから実際に株を買うまでにどのようなプロセスを経る必要があるでしょうか。必要な調査などがありましたら教えていただきたいです。

渡部:当然、個別株を買うのであれば、その企業について知らないといけませんよね。その時に『会社四季報』を見るのはいいと思います。全上場企業の情報をまとめて一冊の本にした『会社四季報』みたいなものって日本しかないんですよ。だから、とことん活用した方がいい。

あとは生活の中で関心を持つことですね。流行っているもの、人だかりができているものを見つけたら、それが何のお店で、誰が運営しているのかを調べてみる。日々好きで使っている商品があったら、その商品を作っている会社について調べてみる。そのように、できるだけ身近なところから入っていくのがいいと思います。

――情報収集の手段として「日経新聞」はいかがですか? 私は一応購読しているのですが、漠然と読んでいるだけで投資的な視点が身に尽きません。投資家の方の日経新聞の読み方についてお聞きしたいです。

渡部:実は12月に『プロも見逃す!10倍成長する株を探す「日経新聞」読み解き術』という本が出るので、そちらをぜひ読んでいただきたいところです。日経新聞の読み方として、投資の初心者の方に一つおすすめするとしたら「キーワード」に注目する読み方でしょうね。たとえば「新〇〇」「最高値」「〇年ぶり」といった目を引くキーワードがあったら、それは何か新しい動きが起きているということだと読み取れます。それがどんな動きなのかを調べてみるというのが最初の取り組みとしてはいいのではないかと思います。

あとは、大きく掲載されている「本流」の記事をきちんとチェックすること。投資をしようとなると、どうしても小さな「ベタ記事」に儲けるヒントが隠れているんじゃないかと考えたくなるんですよ(笑)。でも、やはりメインの記事をしっかり追うこと。といっても全部追うのは時間がかかるので毎日3つくらい選んで、キーワードに注意しながら読んでいくのがおすすめです。

――株価指数や株式チャートの指標といったものに苦手意識を持っている人は多いと思うのですが、投資をするからには理解しておくべきですか?

渡部:株価指数というのは相場の全体像を表すもので、言ってみれば「全国のお天気」のようなものです。実際は場所によって天気はさまざまなわけで、だから「株価指数=株」ではありません。参考程度に見る必要はあるよね、という程度です。チャートも同じで、いずれは理解した方がいいですけど、あくまでも「いずれは」です。

――投資初心者が今やるべきことではない。

渡部:そうです。『ピーター・リンチの株で勝つ: アマの知恵でプロを出し抜け』という有名な投資の本があるのですが、その中で著者のピーター・リンチさんは株価が10倍になる銘柄を見つける方法の話をしているんですけど、「株価は見なくていい」と明確に書いています。

彼が何を言いたいかというと、株価指数やチャートの指標も必要かどうかといえば必要なんですけど、「一番」ではなくて、まずはその企業を見なさいということです。これは私もまったく同感です。その会社はいいのか悪いのか、どんな事業をやっているのかをまずは知ることが大切で、もしかしたらまず株を買ってみることでより調べる気が起きるかもしれません。

買ったら次は株主総会に出て、決算という「定量」だけでなく経営者の人柄など「定性面」もチェックしたり、その経営者の視点で、自分ならこうするだろう、と想像を巡らせてみる。これだけでも脳が投資の脳になってきます。株価指数やチャートの指標はその後でいい。

――「5年後」の世の中を想像するのが株式投資の秘訣として書かれていました。これは、簡単そうでとても難しいのですが、5年後に想像を巡らせるヒントがありましたらお聞きしたいです。

渡部:未来を想像する時に大事なのは、まず過去を振り返ることです。今はあたりまえにみんなが持っているスマートフォンも20年前は当たり前ではなかったですし、タッチパネルだってそうですよね。未来に起きることはこの延長線上にあるんです。

「ドラえもん」を思い出していただきたいのですが、ドラえもんの道具がどのくらい現実になっているのかを以前調べてみたことがあるのですが、3%でした(*1)。つまり、9割以上は実現していなかったんです。でも、この9割の中にこそ、これから「あたりまえ」になる技術や製品があると考えられる。「ドラえもん」を思い出して、理屈にとらわれずに「こうなったらいいな」というところから想像を巡らせてみるのがいいのではないでしょうか。

――最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。

渡部:まずは投資の世界に一歩踏み出してほしいというのが願いです。その一歩が巡り巡って人生を豊かにするということを、今回の本を通して知っていただきたいと思っています。

そして、ぜひ日本の企業に投資しましょう。NISAのよくないところは、制度を作ったまではいいのですが、投資したお金の向かう先はほとんどアメリカの株だというところです。これがおかしい。というのも、これだと円安になるほど株の資産価値が上がるわけですから、日本人が日本円の価値が下がるのを喜ぶようになってしまう。『そろそろ投資をはじめたい。』というのは、「そろそろ日本株投資をはじめましょう」というメッセージでもあるんです。

選挙と一緒で、このおかしな状況を変えるのは、一人一人の行動だけです。お金は経済の血液ですが、今はその流れが止まって、必要なところに行き渡っていない状況です。それを打破するために、一人一人が日本の会社に投資をすることが大切です。それによって国内にお金が回り、巡り巡ってみんなの会社の業績が上がり、給料が上がってインフレにも耐えられるようになっていく。そういう健全な状態を作るためには、個人の投資が第一歩だということを知っていただきたいですね。

*1…最新テクノロジーはなぜドラえもんを超えられないのか(会社四季報ONLINE、2016年渡部清二さん執筆) https://shikiho.toyokeizai.net/news/0/111432

渡部清二さんインタビュー前編を読む

そろそろ投資をはじめたい。

そろそろ投資をはじめたい。

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★人生のどこかでお金と向き合わなきゃいけない……。
それなら、この本でそろそろ投資をはじめてみませんか?

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