だれかに話したくなる本の話

才能も根性もない「デザイナー志望」 飛躍のきっかけになった出来事とは

自分なりの特技や才能をよりどころに自信を持って生きていけたら、人生はきっと楽しく充実したものになる。ただ、それが見つからないと、人の目を気にしたり、自分の意見を堂々と発信できなかったり、将来に希望が持てなかったりと、窮屈な毎日を送ることになりがちだ。

そんな人はキラキラ輝いている人、自分で決めた道を歩んで活躍している人を見ると眩しくて目を背けてしまいたくなるかもしれないが、彼ら彼女たちもはじめから輝いていたわけではない。少なくとも『根性なしがWEBデザイナーに憧れて』(幻冬舎刊)の著者で日本デザインスクール校長として活躍している久保なつ美さんは、いわゆる「落ちこぼれ」だったという。

本書で明かされる彼女が「WEBデザイン」という天職に出会い、プロのデザイナーとして活躍しながら、後進の育成に携わるようになるまでのストーリーは「人はきっかけ次第で大きく変わる」というひとつのメッセージである。

■学生時代から挫折の連続だった人生…転機となった出会いとは

学生の時から勉強するのが苦手。人見知りで責任やプレッシャーに弱く、苦手なことを克服する努力もできればあまりしたくない。

私にとって、働く=我慢すること。

「ドラマで憧れたセレブには一度なってみたかったけど、今世では可能性なさげだな、来世に賭けるとするか」と20代にして早くも諦めている。そんな“まったく夢のない若者”。(本書より)

久保さんの学生時代や若い頃の自分評にはこんな言葉が並ぶ。その言葉通り、若い頃の久保さんにはこれといった特技もなく、高校時代は遅刻を重ねた挙句に指定校推薦を取り消され、ならば、と進学先に選んだアメリカの大学の日本校では、2年間の海外留学を十日で挫折。「クリエイティブに関わる仕事がしたい」と一念発起して臨んだ就職の面接では不採用続きで引きこもりにもなった。どうにかデザイン会社に就職したものの、会社の業績悪化で退職せざるをえなかったり、あまりの激務に仕事を続ける自信が持てなかったりと、なかなか社会人生活も軌道に乗らずにいた。

まったく自信を持てず、将来の展望も開けない毎日。そんな久保さんにとっての転機は、現在株式会社日本デザインで社長を務める大坪拓摩さんとの出会いだった。姉に誘われたホームパーティに参加した久保さんは、たまたま居合わせたウェブデザイナーに仕事を手伝ってみないかと誘われ、一緒に仕事をすることになった。そのデザイナーこそ大坪さんだった。

■ダメダメなデザイナーを変えた奇妙なアドバイス

大坪さんとの仕事は、これまで久保さんが在籍した会社での仕事とはまったく異なっていた。彼は久保さんがこれまで見てきたどのデザイナーよりも優秀で、「利益が薄いぶん案件数で稼ぐ」というビジネスモデルしか知らなかった久保さんが衝撃を受けるような高単価の案件を次々と受注していた。ただ、その分求められる仕事の水準は高く、久保さんのデザインは徹底的にダメ出しをされ、原形がなくなるほど容赦なく作り変えられた。

あまりに上達しない久保さんに大坪さんは「目ん玉を取っ替えたら?」「自分で考えるのはやめて」と、奇妙なアドバイスを送った。はじめのうちはその言葉の意味がわからなかった久保さんだったが、「目ん玉を取っ替えたら?」は「良いものをたくさん見て悪いものとの違いをわかるようになりなさい」という意味で、「自分で考えるのはやめて」は「はじめから自分のセンスでデザインするのではなく、参考になる素材を探しなさい」という意味だとのちに気づき、的確なアドバイスだったと腑に落ちたという。

大坪さんとの仕事を通じて、久保さんはデザイナーとして飛躍的に力を伸ばした。デザインに自信がついてきたことで仕事に主体性が生まれ、事業への当事者意識が生まれた。現在久保さんが校長を務めている日本デザインスクールも、久保さん自身が発案し、創設したものである。

■人生が思い通りにいかない人へのメッセージ

あなたが今自分に自信が持てないとしたら、それは「才能がない」わけでも「根性がない」わけでもないかもしれない。まだ好きなことや、やりたいことが見つかっていないだけかもしれない。(P9より)

本書で久保さんはこんなことを書いている。きっかけ一つで人生は大きく変わる。まずは何か、なんでもいいからスキルを身につけることはそのきっかけになりうるのである。際立った特技や才能がなくても、「こんなふうになれたらいいな」という漠然とした憧れのようなものであっても、目指すものがあれば人はがんばることができ、そのがんばりによって人生は拓けていく。それは久保さん本人がWebデザインという仕事との出会いを通して実感してきたことだ。

「自分にしかできないことをしてみたい」
「自分に自信を持てるようになりたい」
こんなことを考えつつもなかなか思い通りにいかずに悩んでいる人も諦める必要はない。何度壁にぶつかっても久保さんのように「理想の人生」を求め続け、努力を続けていれば、それはいつかかならず手に入る。

毎日に充実感を感じられない人、将来に明るい展望が持てない人、目標を見つけられない人にとって、久保さんの半生がつづられた本書は、「自分にもできるかも」と思わせてくれる希望の書となるはずだ。

根性なしがWEBデザイナーに憧れて

根性なしがWEBデザイナーに憧れて

スキル0、センス0、根性なしのポンコツがWEBデザイナーに!

コンビニのアルバイトすらまともにできなかった引きこもりがダメダメな自分に挑んだどん底からの挑戦と成長の軌跡

日々の生活に彩りがなく、仕事に情熱を感じられない。
できれば働きたくないけど、仕方がないので働いている。
そんな気持ちを抱えている人は決して少なくありません。

著者は、やる気も根性もあまりなく、どちらかというと怠け者。
「できれば働きたくない」と思っていた一人でした。
ある時「お菓子を食べながら仕事ができそうだから」という軽い動機で
クリエイティブ業界に足を踏み入れてしまったことで、人生が一変します。

何もできない挫折だらけの「ポンコツ」見習いWEBデザイナーからスタートし、
クリエイティブ業界で多くの失敗を経験しながらも自分を信じ続けた結果、
著者は業界で認められるプロフェッショナルのWEBデザイナーに成長しました。
その過程で学んだダメな自分を受け入れながらも向上心を持ち続け、
少しずつ自分を成長させていく具体的な方法を紹介しています。

著者のリアルな姿は自分に自信が持てずに悩んでいる若い人はもちろん、
人生やキャリアの中盤に差し掛かり、これまでとは違う何か新しいことに挑戦をしたいが、
どう最初の一歩を踏み出せばいいか分からないという人たちに、
自分の新たなポテンシャルを発見し、情熱を注ぐきっかけとなるはずです。

本書は決して成功の物語ではありません。
著者が恥ずかしい失敗をしたときに内面とどう向き合い、
どのようにして生活と仕事の質を高めたのかが細やかにつづられています。
今の自分から変わりたいと思っていても変われないすべての人にとっての貴重な教訓になります。

著者の体験を通じて、自己疑念を乗り越え、小さな一歩から始める勇気と、
自分らしく生きるためのヒントを得ることができる一冊です。

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