だれかに話したくなる本の話

「さすが」は英語で何という?カンタンそうで難しい英語表現

八月のお盆休みを利用して海外旅行に行くという人の中には、旅先で困らないように、と今から英語を勉強している人もいるかもしれない。普段使っている日本語を不自由なく英語でも話せる人はかなりの英語上級者。しかし、そこはやはり別の言語である。日本語の中にはどうにも英語に訳しにくいものもあるらしい。

■翻訳者泣かせの「さすが」という日本語

『なぜ日本人はupsetを必ず誤訳するのか ~ 英語のフレームで考えるということ』(アン・クレシーニ著、アルク刊)は英語と日本語のあいだの埋めがたい溝について考えさせる一冊。たとえば「さすが~だ」という日本語は、ぴったりくる英語表現が見つかりにくい言葉の一つなのだという。

「さすが大学教授ですね!」という場合、お堅く言うなら「That is to be expected from you as an professor!」となるが、あまりこういった言い方はしないそう。

あるいは「That is just like you.」や「That is something an professor would do.」という言い回しもあるが、日本語の「さすが」とは微妙にニュアンスがずれてしまうそうである。

ちなみに単独で「さすがですね」という時は「Yeah, of course, you did.」「You’re awesome!」などがあるが、3文字で端的に感嘆を表現する「さすが」にぴったり重なる表現ではない。「さすが」は翻訳者泣かせの日本語なのである。

■「ご迷惑をおかけしてすみません」を英語にすると?

日本人がよく使う「迷惑」というのも、英語にしにくい。というのも、日本語の「迷惑」は「邪魔をする」「不便をかける」「困らせる」「イライラさせる」などかなり広い意味を包摂した、ある意味で曖昧な言葉だからである。

工事現場に貼られている「ご迷惑をおかけしてすみません」というアナウンス一つとっても「騒音を出していること」が迷惑なのか、「通行の妨げになっていること」が迷惑なのかで、「ご迷惑をおかけしてすみません」の言い回しは変わってくる。

騒音に対してであれば、「We are really sorry to bothering you」と「bother」が適切だろう。通行の妨げになっていることに対してであれば「We are really sorry to inconvenience you」と、「不便をおかけしてすみません」という言い回しの方が趣旨が伝わるはずだ。この「迷惑」もまた、文脈をとらえないとぴったりした英語表現を作れない言葉のようである。

本書では、英語を勉強していても「これ、どうやって訳すんだろう?」と迷ってしまう、日本語と英語の間のちょっとしたエアポケットのような言葉が集められている。英語にできないわけではない。でも、ぴったりした表現が見つからないという日本語を知り、自分なりの英語表現を探ってみることで、通常の英語学習ではなかなか身につかない「生きた英語」が身につくはずだ。

(新刊JP編集部)

なぜ日本人はupsetを必ず誤訳するのか ~ 英語のフレームで考えるということ

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