「コンビニおにぎり」から政治経済、資本主義がわかる一冊
政治や経済というと、小難しくとっつきにくいものというイメージを持ちやすい。
ただ、政治も経済も、私たちの生活と繋がっているものだ。だから、たとえば普段食べている食べ物からでも、政治や経済を読み解くことができる。『食べものから学ぶ現代社会 私たちを動かす資本主義のカラクリ』(平賀録著、岩波書店刊)はまさにそんな一冊だ。
◾️「コンビニおにぎり」から読み解く政治と経済の話
本書では、京都橘大学経済学部准教授、立命館大学BKC社系研究機構客員協力研究員の平賀録氏が、砂糖や小麦粉など身近な食べものから資本主義を解説する。
近くのコンビニでおにぎりを買えることは「当たり前」な現象ではなく、そこに店があっておにぎりが売られているからだ。そこにコンビニという小売業の経済主体があって、転生とアルバイトという経営者と労働者が働いていて、おにぎりを販売してくれている。
おにぎりを作るためにも、食品製造業の企業や工場やそこで働いている人たちがいる。農産物を集めたり運んだり仕分けたりする企業や労働者もいる。そもそもコメを栽培する農家や農場で働く人たちがいる。さらには農業で使う肥料や種子も最近は商品開発して販売する産業にもなっている。
コンビニでおにぎり1つ食べることを可能にするために、生産から消費までその前後や周辺にも、たくさんの人や企業が関わっている。その多くの企業や事業体は、現在の経済社会の仕組みの中で、売るための商品としてコメや梅干しやおにぎりを作っているのだ。
また、おにぎりの裏側には、名称や原材料名、消費期限、製造者の名前と住所などが書いてある。この小さなラベルに、何の情報をどんな順番で書くかなども決まりがあり、消費期限の決め方や製造現場で守るべき衛生基準、さらには農業や貿易の政策をどうするかなど、政府や法律がさまざまなルールを整えているから、企業がスムーズに経済活動を行うことができるため、消費者がコンビニでおにぎりを買うことができる。
そもそもがんばって得た利潤を自分のものにできなければ誰も働かないかもしれない。現在の経済の仕組みは私的所有権に基づいて動いており、この現在の経済の仕組みを資本主義経済と呼ぶ。おにぎり1つから、人は世界の政治と経済と繋がっているのだ。本書ではこのように、食べものから現代社会のカラクリを読み解いていく。
食べものから現代資本主義経済のカラクリについて学ぶと同時に、現在の食や農がどれだけ経済や金融に組み込まれているかも本書を読むと知ることができる。食べものという身近なものから、自分のこととして経済や世の中のカラクリを見ることができるようになるはずだ。大人が読んでも面白いが、子どもが社会について関心を持つきっかけになる一冊だ。
(T・N/新刊JP編集部)