だれかに話したくなる本の話

名経営者が語る「老後の愉しみ方」とは

「老後に時間を持て余す」なんてあり得ない。むしろ、「これじゃあ老後が何年あっても足りないぞ」と述べるのは、伊藤忠商事会長、民間人初の中国大使を務めた名経営者・丹羽宇一郎氏だ。

老後の生きがいや終活について、悩みを抱えている人も多いだろう。では、どうすれば人生の後半戦の日々を楽しみ、充実したものにできるのか。

『老いた今だから』(講談社刊)では、そんな丹羽氏が、老境に入ってからも「人生、これからだ」と前向きにとらえて積極的に生き、楽しみも増やしていくための日々の味わい方、愉しみ方を紹介している。

■心穏やかに過ごすための「朝の散歩」

丹羽氏は早朝の散歩を大切にしている。それは、健康のためばかりではなく、この先の人生を夢と平和を失わずに心穏やかに過ごしていきたい、という思いがあるからなのだそうだ。

誰もいないところを小声で歌を口ずさみながら、ゆっくりと歩いていると気持ちが落ち着く。早朝散歩がもたらす精神の安定と健康のおかげで生活が平和になれば満足という気持ちだという。

ただし、定年退職後の年齢を考えると。朝起きてすぐに歩くと身体に大きな負担がかかる。早朝に散歩する場合は、起きたあと30分ほどウォーミングアップのつもりで身支度や軽い体操をして、身体を慣らしてから出発するのがいい。

加齢とともに、思うように動けない、腰や膝に痛みが走る、手足の指先が痺れる、といった身体の故障が続くようなら休む。気候の変化にも注意しながら、自分の力と相談するようにするのがポイントだ。自分の体力によって無理のない時間を自由に決め、慎重に少しずつ歩くことが大切になる。

また、いくつになっても脳は鍛えられる。脳を衰えさせないために丹羽氏がやっているのは、読書、日記、日々の情報収集の3つだ。たとえば読書では、読んでいるうちに考えを養える。著者が言うことをそのまま受け身で読むのではなく、ところどころで「なぜ?」「どうして?」と立ち止まる。それによって考える力は磨かれるのだ。

 ◇

丹羽氏のように、「これじゃあ老後が何年あっても足りないぞ」とワクワクしながら毎日を過ごしたいもの。70代、80代も充実した日々を過ごすためにも、丹羽氏の考え方や日々の愉しみ方を参考にしてみてはどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)

老いた今だから

老いた今だから

伊藤忠商事会長、そして民間人初の中国大使を務めた名経営者が85歳の老境に入ったからこそ感じる、日々の味わい方と愉しみ方とは。

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T・N

ライター。寡黙だが味わい深い文章を書く。SNSはやっていない。

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