だれかに話したくなる本の話

既存事業が飛躍する!日本の経営者が知るべきDXの本当の価値

2010年代前半以降、デジタル技術が経済に大きな影響を与えるようになり、データアナリティクス、AI、IoTといった新たなテクノロジーが企業活動の推進にもはや欠かせない。IT企業やテクノロジー企業だけでなく、農業や工業、サービス業まで「すべての企業はソフトウェア企業である」というのが、世界では共通認識になりつつある。

日本でもDXの推進が叫ばれているが、コロナ禍で一気にDXが進んだ欧米諸国と比べると遅れをとっていると言わざるを得ない。その原因はまだ日本の経営者がDXの意義、そしてその威力をまだ十分に理解していないからかもしれない。

「DXってよく聞くけどうちは会社の根幹となる既存事業が優先」
「既存事業で利益を確保しないことにはDXへの投資はできない」
経営者自身がこのように考えているのなら、それはまだDXを理解できていないのかもしれない。

◾️日本の経営者が知るべきDXの本当の値打ち

『日本型デジタル戦略 - 暗黙の枠組みを破壊して未来を創造する』(柴山治著、クロスメディア・パブリッシング刊)は日本企業のデジタル活用の現状を指摘しつつ、経営者向けにデジタル戦略の描き方を解説する。

そもそも、現在の日本において、明確なデジタル戦略を持っている企業はごく一握りにすぎない。デジタル技術が自社のビジネスにどんな変革をもたらしうるか、デジタル技術を自社のリソースと組み合わせたら何ができるのかについて想像が及んでいない企業が大半かもしれない。また、「AIを活用した新規事業をやりたい」といったことは考えても、デジタル技術が既存事業に変革をもたらす可能性については考えていない経営者も多い。

もちろん、デジタル技術を活かした新規事業をやるのはいい。しかし、DXは既存事業も対象にしたものであるという視点を忘れてはいけないと本書では説いている。これまで、デジタル技術とは縁がなかった企業であっても、事業を継続する過程でさまざまなデータが蓄積されているはずだ。これらのデータに新たな価値を与える手段がDXなのである。

特に「ものづくり大国」である日本は古くから、製品そのものから顧客のデータを取る仕組みを構築してきた。これはDXにおいて大きな強みになると本書では指摘している。

日本企業の内側には、すでに膨大なデータが蓄積されている。これらの活かし方次第では、既存事業や現在の企業文化が生まれ変わる。DXはこうした可能性を秘めており、日本企業はDXとの相性がいいのだ。

自社にはこれまでの事業を通じてどんなデータが蓄積されているのかを考えることは、「自社にとってのDXは何か?」を考えることと同義である。そして、それが自社のデジタル戦略を考える第一歩となる。本書では、DXを単なる事業の効率化に終わらせず、事業を飛躍させる切り札にするための考え方と目の付け所が解説されている。経営者むけに書かれてはいるが、あらゆるビジネスパーソンにとって「今まさに読むべき一冊」である。

(了)

日本型デジタル戦略 - 暗黙の枠組みを破壊して未来を創造する

日本型デジタル戦略 - 暗黙の枠組みを破壊して未来を創造する

日本の企業が脱構築を実現し、デジタルで世界をハックするための経営戦略の指南書!

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