だれかに話したくなる本の話

高齢期の幸福のカギ「心地いい居場所」を作るヒント

人生100年時代と呼ばれるようになり、「長い高齢期をどう生きるか」を考える時代に入った。どんな環境に身を置けば、身体も心も社会的つながりにも問題ない幸せな高齢期を実現することができるのか。

『なが生きしたけりゃ居場所が9割』(川口雅裕著、みらいパブリッシング刊)では、様々な統計データを示し、エビデンスに基づいた高齢期に相応しい居場所づくりを紹介する。

◾️高齢期の幸福度を決める「居場所」の問題

高齢者の孤独や孤立が、健康に悪影響を及ぼすことがいくつもの研究によって明らかになっている。しかし、「一人がいい。人に関わるのは面倒だ」という人もいるだろう。現役時代には、仕事や子育てや近所づきあいなどで、嫌なことがあっても関わらなければならないし、気の進まない人や場面から逃げるわけにはいかないことが多いが、高齢期になるとそれらがなくなっていく。なので、ストレスが減少し、自由や幸福を感じやすくなるという面もある。

大事なのは、その孤独が自分で選択したものかどうかだ。他者から孤独に見えたとしても、それが一人になりたいときに一人になっているのであれば、何の問題もない。問題なのは、誰かと交流したいのに一人でいるしかない、自分で選択したわけではないのに常に一人になってしまう「意図せぬ孤独」だ。周囲に人が少なく、会話や交流をする相手が見つからないといった環境が原因であるケース、交流の場や機会に関する情報提供や誘ってくれる人の不在という人材不足が原因であるケース、参加する意欲や勇気の不足、場への不適応といった本人が原因となっているケースがあるが、このような意図せぬ孤独に対するケアこそが、解決すべき課題となる。

元気と健康を維持し、若々しくいる秘訣は「同世代で集まる」暮らしだ。高齢者が同世代と集まるメリットはたくさんある。たとえば、心身の痛みやつらさをシェアすることができること。年をとれば誰でも体のどこかに不調が出てくる。さまざまな喪失経験で精神的なダメージを受けるケースも増える。そんなときに、同じような経験を持って共感してくれたり、情報やアドバイスをくれたりする仲間は同世代に限られる。

また、同世代で集まると、役割や居場所が生まれる。若い人たちとの集まりだと「ここは私たち若者がやりますから、ゆっくりしていただいて」と年寄り扱いされることもある。高齢者だけで集まったら、そういうわけにもいかない。自然に集団の中での役割や居場所が生まれてくる。役割や居場所は、褒め合いや認め合いとなり、承認欲求や自己効力感を満たしていく。

医療は病気を治すが、幸福や暮らしの楽しさを提供してくれない。長い高齢期を幸福に暮らすためにも「高齢期に相応しい環境づくり」を考えてみてはどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)

なが生きしたけりゃ 居場所が9割

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T・N

ライター。寡黙だが味わい深い文章を書く。SNSはやっていない。

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