国税局が資産家の相続税調査で「趣味」をたずねる理由とは
ごくごく少数ではあるが、世の中には「富裕層」と呼ばれる人々がいる、数億円以上の資産を築き、日々のお金の心配とは無縁の人々である。
彼らは豪邸に住み、高級車に乗り、巨額の資産の運用益だけで暮らす…とは限らない。その生活ぶりは一般庶民と大差ないか、少なくとも大差ないように外からは見える。見るからにお金持ちという富裕層がいる一方で、パッと見はお金持ちに見えないという富裕層もまた多いのだ。
■国税局職員が富裕層に趣味を尋ねる理由
そんな富裕層の実態と生活、考え方を知ると、彼らはなるべくして資産家になったことがわかる。『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(小林義崇著、ダイヤモンド社刊)は、富裕層とそうでない人のお金に対する意識の違いを明らかにする。
タイトルの通り元国税局職員だった著者は、相続税の調査などで資産家の家を訪問するとき、必ず家族に故人の趣味を尋ねていた。というのも、趣味はときに相続税の申告に影響するからである。
富裕層の中には「投資が趣味」という人が少なくない。その場合は相続税の申告書に金融資産が記載されていなければ国税局としては「資産をどこかに隠しているのでは」という疑いを持つことになる。また、「海外旅行が趣味」という人も、国税職員は気になるのだそう。富裕層の多くは海外投資を行うため、海外に財産を隠している可能性を考慮する必要があるからだ。
■富裕層の趣味で一番多いのは…
では、富裕層はどんな趣味を持つ人が多いのか、と気になるところだが「無趣味」あるいは「仕事が趣味」という人が多かったそう。多額の資産を残しえたのは勤勉に働き抜いたからゆえなのかもしれないし、お金のかかる趣味を持たなかったからこそ手元に資産が残ったのかもしれないが、富裕層の趣味事情にあまり華やかさはない、というのが、多くの資産家や富裕層と対峙してきた国税局員の実感なのだ。
これは、調査によっても裏づけられている。調査会社ウェルス-Xが発表したランキングによると、資産総額3000万ドル以上の超富裕層の趣味・関心事で一番多かったのは「ビジネス」で全体の56%を占めている。ちなみに二位は「慈善活動・社会奉仕」、三位が「スポーツ」、四位が「金融」となっている。やはり、富裕層は「仕事が趣味」という人が多いのである。
富裕層や資産家がかならずしも派手にお金を使う華やかな暮らしをしているわけではない。それは高価な車や衣服、きらびやかな暮らしに興味がないからであって、彼らは単なるケチではない。使うところにはしっかりお金を使うというのもまた、富裕層の特性である。そして、そのお金の使い道こそが富裕層を富裕層たらしめているといっていい。
本書では彼らがお金を惜しまない分野は何なのかについても詳しく解説されている。富裕層の視点と考え方に触れることで、自分の仕事観やお金観、そして人生観を振り返ることができる一冊である。
(新刊JP編集部)