「意味のある人生」を追い求めると苦しくなる 毎日がラクになる思考
人は何かにつけ意味を探し、自分の人生や自分の行動、自分の思考や判断に意味があると考えたい生き物である。
就職して働くようになると、会社の中で出世をすることや収入を増やすことが人生の意味となるなるかもしれないし、学生生活では有名な大学に入ることが勉強をする意味になるかもしれない。このような人が挫折をすると、中年期の精神的な危機であるミッドライフクライシスに陥りやすい。
「人生には意味があるべきだ」と思い込むからそうなるのであって、「人生には取り立てて重要な意味などない」と思えば、今一番楽しいことをすればいいと思える。そう述べるのは『人生に「意味」なんていらない』(池田清彦著、フォレスト出版刊)の著者である池田清彦氏だ。
◾️「意味のある人生」を追い求めると自分で自分を苦しめてしまう
本書では、生物学者、評論家、理学博士の池田清彦氏が、「人生には意味があるべきだ」いう言説に普遍的、超越的な価値はないとし、 「人生に意味なんかなくてもいいじゃないか」「そもそも人生に意味なんてない」と主張し、「意味を求める病」を手放す生き方を紹介する。
人生の意味を求めて自分探しの旅に惹かれることがある。ただ、動物は確固とした自我がないため、「本当の自分って何だろう」と疑問にとらわれることもない。人間だけが「本当の自分」という概念をめぐって悩むのだ。なぜ、そういうことになるかというと、「リアルな自分」の現状に不満があるからだ。今よりも素晴らしい自分になれるという自我の妄想とリアルな自分の落差が激しくなると、自分をどんどん嫌いになっていき、自己肯定感が低くなっていく。どれだけ「自分はすごい」と思ったところで、他人はリアルな自分しか評価してくれないので、思い描く自分とリアルな自分が接近しない限り、不満は解消されない。
本当の自分とは、社会が自分にあてがってくれたポジションにいる自分のことだ。社会が自分にあてがってくれたポジションが気に入らないなら、リアルな自分の立場を変える努力をするしかない。無闇にがんばるのではなく、自分の個性に適応的な場所を探す努力をしたほうがいい。本当の自分は今、そこにいるのだということ。それ以外の自分を無理に探そうとしないことが、現代を健やかに生きていくうえで大切なことだと、著者の池田氏は述べる。
意味のある生き方という考えに固執してしまったとき、人生に意味はなくても楽しく生きられる、生物界は意味のないものも多く、人生に意味なんていらないという本書を読むと、気持ちがラクになるはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)