人生の最終ステージ「65歳以降」を充実されるために知るべき「心のがん」
長い人生には3つのステージがあるとされる。 第1ステージは、生まれてから30代半ばくらいまで。第2ステージは、働き盛りの年代。そして、最後の第3ステージは定年退職を迎える65歳から死ぬまでである。
この最後のステージの入り口に立った人は、仕事や社会生活の第一線からは退く。それによって多くの場合、家族との関係や健康にも変化が訪れる。人生の最後のステージである65歳以降を自分の生き方にフォーカスし、心穏やかに楽しく生きるのは、誰しもにとっての課題だろう。老いは仕方がない。しかし老いによって何を手放すか、といった価値観の問題でもある。
■65歳以降の人生を明るく健やかに過ごすメンタル術
『70歳から楽になる 幸福と自由が実る老い方』(アルボムッレ・スマナサーラ著、KADOKAWA刊)では、スリランカの国立大学で仏教哲学の教鞭をとり、1980年に派遣されて来日し、初期仏教の伝道に従事しているスリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)長老のアルボムッレ・スマナサーラ氏が、仏教の教えから、70歳以降の残りの人生を明るく過ごすための智恵を紹介する。
多くの場合、人は性能の良い体を持っていて、だいたいの臓器はうまくメンテナンスしてやれば、生まれてから死ぬまで使用することができる。たとえ、どこかにがんができたとしても、今は手術や薬物治療でうまくコントロールできるケースが増えている。
問題は「心のがん」であるとスマナサーラ氏は指摘する。人は体のがんより先に心のがんにかかる。そして、心のがんと無縁な人はいない。落ち込みも重度の心のがんだが、人は体のがんは治したいと思うのに、心のがんは放置してしまう。今すぐ取り組むべきは、心のがんと治療だという。
氏は心のがんを治すための特効薬を「慈悲の気持ち」だとしている。慈悲の気持ちは、もともとあるものではなく、自分の中で育てていくもの。この慈悲の気持ちを育てるには、日頃からのシミュレーションは必要だ。たとえば、自分の子どもと同年代の子どもを見たら、みんな自分の子どもだと思ってみる。自分の親と同じ年代を見たら、自分の親だと思ってみる。そうすればみんな家族。自分には理解できない服装をしている若者も、みんな可愛く感じられ、「怪我するなよ。幸せになれよ」と思えるようになるという。
楽しい心を保つ条件として、人に対するイライラは厳禁。他人とは価値観が違うし、気が合うとは限らない。誰かにイライラするのは、心のがんを増殖させてしまう。そもそも人の言動が気になるのは、自分に原因があると考えた方がいい。自分の監督がしっかりできていれば、「そんなことにこだわっているよりも、ほかにすることがある」とわかるはず。
まずは自分自身が楽しい心持ちでいること。そうすれば、いろいろ言ってくる人に対しても、何も悪い感情は生まれないのだ。
年を重ねるごとに、今までできていたことができなくなったり、体力が衰えたり、社会とのつながりも薄く感じることが増えるかもしれない。そのような時期の年代に入ったら、仏教の教えから心の保ち方や楽しく生きる智慧を学び、実践してみてはどうだろう。最後のステージをより、充実した生活にできるはずだ。
(新刊JP編集部)