中小企業の戦略が成果に結びつかない3つの理由
業績向上と組織の成長のために欠かせないのが、どの分野でどのように勝っていくかという「戦略」である。
大企業ではこの戦略を推進する専門の部署があるが、中小企業では経営者本人がこれを行うことも多い。もちろん、戦略を立てることで今やるべきこと、来年やるべきことが整理されるというメリットは大きいが、戦略を実行するPDCAが組織に根づいて、業績が伸び続けている企業となると、かなりまれなのが現実だろう。
■戦略を立てたのに成果が出ない3つの理由
もし、戦略を立てたのに成果が伴わない場合、そこにはどんな原因があるのだろうか。多くの場合「戦略がまちがっていたのだ」という結論に行きつきやすい。しかし、戦略が成果につながらない原因は「戦略そのもの」にあるとは限らない。
『小さな会社の〈人を育てて生産性を高める〉「戦略」のつくり方』(山元浩二著、日本実業出版社刊)はこんな観点から中小企業に向けて、事業の成長という成果に結びつく戦略の作り方と、実践の仕方を指南する一冊だ。
では、先述の「成果が伴わない原因は戦略そのものにあるのではない」とはどういうことだろうか。
・戦略で成果を出すポイントを間違っている
・戦略を成果に導く体制が整っていない
・戦略のゴールがない
本書ではこの3点を戦略で成果が出ない本質的な原因としてあげている。いずれも戦略そのものが原因ではないことに注目すべきだ。
たとえば「戦略で成果を出すポイントを間違っている」は、効果的な戦略が立案できれば成果につながると考えるあまり、本来成果をあげるために必要な、「戦略を実行すること」がおろそかになってしまいやすいことが背景にはある。戦略は立案するだけでも時間と労力がかかるため「作って満足」になってしまいやすいのだ。
「戦略を成果に導く体制が整っていない」は中小企業にありがちなリソース不足によるもの。多くの中小企業には戦略の推進担当者がいないため、戦略を学び、立案し、組織に浸透させ、実行させるという各段階をすべて社長自身か一部の経営幹部が担うことになりやすい。そして、経営者・経営幹部自身も現場に出て働くプレイング・マネジャーであることが多いため、日々の仕事に忙殺されてしまい、戦略の立案や実行、推進管理に十分な労力をかけられないのである。
また、「戦略のゴールがない」は、組織として達成したい目標を定める前に戦略を作ってしまうことが原因。これは元をたどると会社の「理念」が定まっていないことに起因する。企業の理念を具現化するためには目標が必要で、その目標を達成するための作戦こそが戦略だからである。
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戦略が成果に結びつかないことの本質的な原因を特定したうえで、本書ではこれらの原因を解消し、正しい戦略がそのまま成果に結びつくマネジメントの方法を伝授していく。
戦略の必要性は重々承知していても、なかなかそこに注力できず、立案も実行も中途半端になってしまい、成果も出ない、というのが全国の中小企業で起きていることである。本書はその現状を打開し、組織が一皮むけるための助けになってくれるはずだ。
(新刊JP編集部)