だれかに話したくなる本の話

人生に幕を降ろそうと身を投じ重傷を負った妻と、懸命なリハビリ生活を支え続ける夫。夫婦の絆と愛情を描く再生物語。

「人生の伴侶」という言葉があるように、妻や夫、パートナーとは一生を添い遂げたいもの。しかし、病気や事故などさまざまな要因でそれが脅かされることがある。もし、自分のパートナーが精神や肉体に想像を絶するダメージを受けたら、あなたはパートナーのために何ができるだろうか?

■人生が一変した妻の自殺未遂

『朝陽を待ちわびて~妻の再生物語~』(幻冬舎刊)の著者・桜木光一さんの妻は2021年の10月、自殺を試みて歩道橋から飛び降りた。落下の恐怖を少しでもやわらげようと欄干に後ろ向きに座った。心優しい妻は脳が飛び散って掃除をされる方が苦労されないようにと、頭にはビニール袋をかぶって飛び降りた。

桜木さんの妻は長く義母との関係に苦しんできた。義父もその防波堤になろうとはしなかった。桜木さん自身も結果として妻を守り切れなかったことを後悔した。 事故の3日前、死期が近づいた義父が桜木さん夫妻を呼び寄せた。その際、義父はお礼を言うどころか、桜木さんの妻に対して心を深く傷つける言葉を吐いた。その言葉は心の奥底に深く刻み込まれた。

■すべての人が読むべき「愛と苦しみと感謝の書」

コンクリート舗装の道に左前頭葉を叩きつけ気絶。その際に頭蓋骨骨折と脳挫傷、左目の内側の骨を骨折、第1腰椎は圧迫骨折、左手は3カ所骨折。骨盤は仙骨・恥骨含む3カ所骨折、嗅覚と味覚消失。全ては一瞬の出来事だった。左脚の痛みとしびれは一生涯残り、気脳症・排泄障害・尻の激痛他感覚障害・左脚の温冷感知機能含め、頭から足先まで全体で16カ所の致命傷を負った。(『朝陽を待ちわびて~妻の再生物語~』より)

歩道橋から落下した桜木さんの妻は奇跡的に一命をとりとめた。しかし、ここからが桜木さん夫妻の本当の闘いだった。死の境界に近付く際に現れる『せん妄』の症状が現れ、三途の川を渡る極限状態まで辿り着いた。圧迫骨折した脊椎に人口脊椎を入れる為の手術は8時間におよんだ。連日の激痛と痺れ、襲い掛かる高熱。もがき苦しむ妻に桜木さんは24時間寄り添った。

思うように動なくなった身体。部分的に治っては壊れる一進一退の攻防。身体機能の喪失と共に、我に返った妻の絶望感。この先の人生への不安。精神的にも押し潰されそうになる妻を、時に戸惑い、一緒にもがき苦しみながらも懸命に励ます夫。

痛ましく苦しい毎日だが、回復を目指す妻に寄り添う過程で、桜木さんは妻との、ふとした会話から、小さな光を探し始めていた。日に日に心を通わせ、幸せと喜びを改めて噛み締め始めていた。妻が生きていることへの感謝。妻を生かしてくれた人への感謝。本書は、ある夫婦が奈落の底から這いあがり、周囲に感謝しながら、改めて夫婦の絆と愛情を育んでいく物語である。

大事な人に何かあったら、あなたはどこまで相手に尽くせますか?本書はパートナーや家族への愛情について改めて考えさせてくれる。

(新刊JP編集部)

【厚生労働省が紹介している主な相談窓口】
・いのちの電話 0570-783-556(ナビダイヤル)/0120-783-556(フリーダイヤル)
・こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(ナビダイヤル)
・#いのちSOS 0120-061-338(フリーダイヤル)
・よりそいホットライン 0120-279-338(フリーダイヤル)
 岩手県・宮城県・福島県から 0120-279-226(フリーダイヤル)

朝陽を待ちわびて ~妻の再生物語~

朝陽を待ちわびて ~妻の再生物語~

あなたは大切な人を、どれだけ支えることができていますか?

2021年10月、ある日の明け方に発生した妻の自殺未遂。
一度は死の境界線を渡った妻を、私は土壇場で呼び戻した。
そしてこの日から、二人三脚の闘傷生活が始まった。
複数骨折により全身を襲う高熱や痛みとしびれ、喪失する神経機能。
この全てに耐えながらリハビリに挑み、懸命に再び生きようとする妻と、後悔と自責の念に駆られつつも、必死に介添えを続ける著者。
再生を信じて痛みに向き合い続ける妻の闘いを描いた、奇跡と希望の物語。

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