【「本が好き!」レビュー】『爆弾』呉勝浩著
提供: 本が好き!酔って酒屋の自動販売機を蹴り、止めようとした店員を殴った罪で、ある男が逮捕された。本人によると、名前は「スズキタゴサク」。とても本名とは思えないが、スズキは取り調べ中に、いくつかの爆弾テロを予言したのだ。
そして、その予言は当たってしまった。
2つ目の爆弾テロが起きた時点で、捜査一課の特殊犯捜査係、清宮が出てきた。
しかしスズキは手強く、なかなか全貌を明かそうとはしない。
警察は川崎から沼袋の酒屋に行ったことを重視し、沼袋の監視カメラの映像を調べる。
取調室のほうでは、スズキが清宮にクイズを出していた。答えたからといって事件が解決するわけではないが、少なくともスズキのことは分かってくる。
そしてスズキはクイズの中に、次に爆弾を仕掛けた場所のヒントを出す。
警察はその答えに辿り着いたが、3番目の爆弾も爆発してしまう。
これまで8問のクイズを出したスズキだが、クイズは全部で9問ある。清宮はスズキの術中にはまり、危うく8問目に答えてしまうところだった。9問目になると、次の爆弾が爆発してしまう可能性があるのだ。
スズキは自身の路上生活の経験について語り始める。その饒舌な語りの中で、それとなくヒントが出されるのだ。正しい答えが出せなければ、次の犠牲者が出る……。
主な場面は野方警察署の取調室。そこで、単なるパッとしないおっさんであるスズキの話から、どんどん事件が拡大していく。最後まで読むと、仕掛けもなかなか効果的である。ある意味で人間の影の部分をえぐり出すような小説で、直木賞候補になったのも分かる気がした。
(レビュー:三毛ネコ)
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