【「本が好き!」レビュー】『56日間』キャサリン・R・ハワード著
提供: 本が好き!本邦初訳の新潮文庫オリジナル作品だという。
ダブリン市の中央から少し離れたところ。あるしゃれた集合住宅で、若い男性の死体がみつかる。一号室のシャワー室。死体はすさまじい腐臭を放っていた。
コロナ禍でロックダウン中のできごとだった。
一転、物語は56日前にさかのぼる。
ダブリン市の中央近くのスーパーマーケットで、若い男女が出会う。
オリヴァーとキアラ。
ふたりとも、ダブリン市に引っ越してきたばかり。
レジにならぶ列で、オリヴァーはキアラに声をかける。「進んだら」。
それをきっかけに、ふたりの交際が始まる。惹かれ合う若いふたり。
未知のウィルスcovido-19が、世界中に拡がり始めたころだった。
ふたりの出会いは、偶然か、どちらかが仕組んだものか。
ふたりの恋はほんものか、どちらかの策略か。
物語は、集合住宅に警察の捜査が入る「今日」と、過去の56日間のどこかの日を、行ったり来たりしながら進んでいく。
語られる過去の視点は、オリヴァーだったり、キアラだったり。
covido-19は、ダブリンにも侵入し、二人が出会って間もないうちに、ダブリン市はロックダウンされる。外出制限、在宅勤務、家族や同居人以外との接触制限……
会えなくなることを恐れたふたりは、オリヴァーのアパートで同棲を始める。
お互いのことを何も知らないままに。
オリヴァーは、極端に他者との接触を恐れた。
喘息の持病があるから、ぜったいに感染したくないからだとはいうが……
読めば読むほど深まる謎。
さらに読み進むと、少しずつ少しずつ、ふたりそれぞれの身の上と過去が明らかになってくる。
文庫本の帯にあるキャッチコピーが、端的に物語っている。引用しよう。
パンデミック下の出会い、封印された過去、驚愕の深層、そして慟哭の結末
(レビュー:紅い芥子粒)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」