「世界一幸せな国」フィンランドで実践されている幸福習慣
国連が発表している「世界幸福度報告書」で5年連続して1位となったフィンランド。なぜフィンランドは幸福度が高いのか。その秘訣は、フィンランド精神」ともいえる「SISU(シス)」にある。
シスとは、厳しい環境や逆境を乗り越える勇敢さ、耐性・適応力、自分らしい自然体などのことをいう。
■大自然と接点を持つことが心身に与える影響
『EVERYDAY SISU フィンランドの幸せ習慣』(カトヤ・パンツァル著、柳澤はるか訳、方丈社刊)では、フィンランド・ヘルシンキ在住のライターで編集者、ジャーナリストのカトヤ・パンツァル氏が、シスを育むための習慣や人間関係の苦境を抜け出す対処法などを紹介する。
森林浴など、自然とのつながりは、ウェルビーイング(精神的、身体的、社会的な充足感)を高めるシス・ツールキットの一つだ。ストレスを和らげ、活力をよみがえらせたり、心身に安らぎをもたらす。森林浴や森林セラピーは、日本やフィンランドをはじめ、世界各地で長い歴史があり、森の中を少し歩くだけで心身に良い影響があることは、科学的にも証明されている。
フィンランド・アウトドア協会の「フォレストマインド・ワークショップ」は、シプラ・アルヴォネンによって、彼女の同名の本をもとに2014年に開発された。森の自然の治癒力を効果的に活用するためのスキルを教えるプログラムだ。
彼女の本によると、自然の中に10分いるだけで血圧が下がり、20分いると気分が良くなり、1時間いると集中力が向上。2時間後には身体の防御機能が高まっているという。
また、森を訪れるのが難しい場合は、都市の公園や植物がたくさんある場所でも、ちょっとしたグリーンセラピーになるという。
グリーンセラピーが公園や森林の中で過ごして心をケアするのに対し、ブルーセラピーは水の中やそばで過ごすこと。海や川など、自然の中で行う野外水泳は、気分を向上させる効果がある。また、海辺や湖のほとりを歩いて波の音を聞いたり、川のそばで過ごしたりするだけでも癒しの効果がある。
日本でもシス実践者が増えているという。人間関係で悩んだり、何かで落ち込んだときでも乗り越えることができるフィンランド流のシスで幸福度を上げてはどうだろう。自然と触れ合うことだけでなく、さまざまな取り組みによって毎日の充実感や自己肯定感を高めることができるシスは、現代人の多くが必要としているのではないか。
(T・N/新刊JP編集部)