株トレードで個人トレーダーが勝つために必要なこと
副業として、資産運用として株取引はいつの時代も人気だ。「株取引」と一言で言ってもいろいろなやり方がある。その中でも株価チャートを使って売買するトレードがあり、そのチャート分析を研究して、トレードだけで生活していくことを目指している人もいるはず。
ただ、現実はそう甘くない。チャート分析を真面目に勉強しても、実際の株価が理論通りに動くわけではなく、時に予想もしなかった値動きをして投資家を欺く。
『騙されるな!嵌められるな!欺かれるな!株チャートサインを鵜呑みにしない次世代技法』(冨田晃右著、ぱる出版刊)はこの「チャートのダマシ」に注目。思うように動かない株価に翻弄されず、少しでも利益を出すための方法を解説する。
今回は個人トレーダーの冨田晃右氏にインタビュー。なぜチャート分析を勉強してもトレードで利益を出せないのか、トレードで勝つ確率を上げるには何が大切なのかについてお話を伺った。
■チャート分析を研究しても株のトレードで利益を出せるとは限らない
――『騙されるな!嵌められるな!欺かれるな!株チャートサインを鵜呑みにしない次世代技法』はチャートのセオリーを知りつつ、チャートに騙されないためのスキルを教えてくれる一冊です。株のトレードでテクニカル分析をする人の多くはチャートの値動きを研究して「勝ち筋」を探っていると思いますが、それでも騙されてしまうことにはどんな理由があるのでしょうか。
冨田:逆説的ですが「騙されるのは当たり前」なんです。そもそもトレードは思った通りにはならないのが大前提です。たとえば、勝率だけで言えば(利益率や損失率などは考えないとして)10回売買して6勝4敗ならOK。負けることもあるけど、勝つ方が多いならいいというのがこの世界です。ただ多くのトレーダーは勝率100%を求めてしまう。それはどんなに研究してもありえないです。
――全勝はありえないというのをわかったうえでやるのが前提なんですね。
冨田:そうです。チャートを分析して「買いサイン・売りサイン」を研究すればするほど「この兆候が出たら確実にこうなる」と考えやすい。それがそもそも騙される原因なんです。
――今回の本も「絶対に騙されないため」ではなく「いかに騙される回数を減らすか」を念頭に書かれていますね。
冨田:絶対にチャートにダマされないようにすることはできないのですが、どうしたらその確率を上げられるか、というところを解説しています。
――本書ではチャート分析のセオリーを鵜呑みにするのは良くないものの、セオリーはセオリーとして知っておくべきものだとしています。これらのセオリーは古典的なものがまだ通用しているのでしょうか?それとも新しいセオリーが日々生まれているものなのでしょうか?
冨田:古典的な手法が今でも通じている世界だと思います。たとえば「ゴールデンクロス(長期的な移動平均線を、短期的な移動平均線が上に突き抜ける現象。株価が上昇するサインと考えられている)」という昔から知られているサインがありますが、現代でもその通りになることは多いです。
ただ、もちろん100%そうなるというわけではありません。そうならない時も多々あります。 このセオリーだけではなんとも言えず、セオリーというのは複数組み合わせて確率を高めていくのが大切だと考えています。
――そうしたセオリーを実際の値動きが裏切る「チャートのダマシ」が今回の本のテーマです。これが起こる理由の一つとして「機関投資家などによる株価の操作」が挙げられていましたが、これはそもそも回避可能なのでしょうか?
冨田:これは不可能だと考えています。機関投資家などがやることをこちらが知る術がない以上、回避するのは難しいでしょうね。
――こうした株価の操作が日常的に起こっているとすると、個人の投資家やトレーダーは相手の土俵で戦い続けないといけないわけで、不利な感じがありますね。
冨田:不利です。個人の投資家やトレーダーは株式市場に参加することによって、利益を得たいと思っているわけですが、多くのプロ連中が大量の資金を動かしながらお金を奪い合っている株式市場に、少額の資金しか持たない個人が無防備に飛び込んでも基本的にはやられてしまいます。個人投資家は負けるようにできている、ということは知っておいた方がいいと思います。
個人トレーダーがいくらチャートを分析しても、誰でも知っているような一般的な分析を続けている限り、株価は思い通りに動いてはくれません。チャートにはダマシがあることを知り、「チャートのダマシ」に引っかかることを前提として理論武装をしてトレードをしていかないとやられますし、逆にしっかり「ダマシ」を勉強して理論武装をすれば個人でも利益は得られる、というのが私の考えです。
――今回の本では「チャートのダマシ」が起こる理由を3つ挙げています。その1つが先ほどの機関投資家などによる株価の操作で回避困難というお話でしたが、残る2つのうちの1つ「長期的な指標と短期的な指標の読み違え」は回避できそうですね。
冨田:そうですね。機関投資家などの大口の投資家やトレーダーが、将来どういう動きをするかは予想できないのですが、チャートは値動きの事実そのものであり、チャートを見れば、実際の資金の動きを読み取ることができるので、こちらから察知できるものについては回避可能です。「長期的な指標と短期的な指標の読み違え」はまさしくチャートを見て避けることができるものですが、それらを察知するにはやはりチャートのセオリーや原理原則はもちろんのこと「ダマシ」があることも知っておく必要があります。ただ単に「表」だけを知っているのではなくその「裏」も知る必要があるんです。
本書では、「わざとらしい売りサインを読み取って買う方法」や「乗ってはいけない買いサインを読み取って売る方法」なども解説しています。
(後編に続く)