だれかに話したくなる本の話

「森の中を飛ぶ」アマゾンマナティーの生態

『へんてこな生き物』(川端裕人著、中央公論新社刊)

アマゾン川水域にしかいない希少な水生哺乳類のアマゾンマナティーは、世界でも珍しい「森の中を飛ぶ」大型哺乳類といわれている。

アマゾン特有の事情として、雨季と乾季の水位の差が激しいため、雨季には川が氾濫して広大な領域が水没林になる。アマゾンマナティーたちは、その水没した森に入っていっていろいろな植物を食べている。水位の上昇は最大で十数メートルに及ぶため、林床からかなり高いところにある木の葉や果物も食べるという。 アマゾンマナティーは、1年の半分の期間、水没した熱帯雨林の木々の間を縫うように泳いて暮らすのだ。

カラー版-へんてこな生き物-世界のふしぎを巡る旅

カラー版-へんてこな生き物-世界のふしぎを巡る旅

可愛い小動物ハニーポッサムは、巨大な睾丸の持ち主。水棲哺乳類アマゾンマナティが森の中を「飛ぶ」って? ペンギンなのに、森の中で巣作りをする「妖精」。まるでネズミ! 手のひらサイズの巨大な虫。

かわいかったり、美しかったり、ひねくれていたり、奇妙だったり、数奇な運命に弄ばれたり、とにかく常識を軽く超えてくる生き物たちの「へんてこ」ぶりを活写。

三〇年以上にわたり研究者やナチュラリストと共に活動してきた著者が、新しい科学的なトピックをまじえて約五〇種の生態を楽しく紹介する。二〇〇枚超のオリジナル写真を掲載。生き物とヒトとのかかわりの歴史を垣間見る意味で、古い博物画も収載した。

かくも多様な生き物たちが存在することに、「あっ」とセンス・オブ・ワンダーを感じずにいられない一冊。