だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『書店主フィクリーのものがたり』ガブリエル・ゼヴィン著

提供: 本が好き!

マサチューセッツ州のハイアニスからフェリーでアリス島へと向かうアメリアは、そこで出会うことになる A.J. フィクリーのことを何も知りませんでした。だって、前任者が突然亡くなってしまって、代わりに行くことになったんですもの。第一印象はとにかく偏屈、出版社の営業であるアメリアの話をちっとも聞いてくれない。なのに、何年かするうちに親しくなれるなんて、夢にも思っていなかったでしょう。

本屋がない町なんて町じゃないという思いで、A.J.はこの町で唯一の書店「アイランド・ブックス」を愛する妻と二人で営んでいたのに、突然彼女が亡くなってしまって、すっかり生きる意味を見失ってしまっていたんです。そんな彼の店に、なぜか2歳の女の子「マヤ」が置き去りにされていたんです。みんなは彼女を施設に送ろうかと相談していたのですが、突然 A.J. が言い出したんです。「この子を自分の娘にする!」

マヤと一緒に暮らすようになって、A.J.の生活はガラッと変わりました。自分の人生にあかりが灯ったような気持ちになったのです。友人たちもホッとしました。これで奴は前を向いて生きて行けると。

アリス島は架空の地名のようなのですが、ハイアニスからフェリーに乗るということは、ケープコッドからほど近い島ですね。夏には観光客が大勢訪れる場所だということが話の中にも出てくるので、なかなかステキな場所だということが想像できます。

書店回りをする営業をしているアメリアが、A.J. と少しずつ仲良くなっていくのだけど、そんな2人をマヤはきっと「大人ってめんどくさいなぁ」って思ってたんでしょうね。

夏にアイランド・ブックスで、本の著者を呼んで行われた朗読会やサイン会っていいですね。行ってみたいなぁ。

P.S. マヤの服を買いに行ったファイリーンズベースメントは、ボストンの有名な洋服の安売店です。ここに行くと、値段が安だけでなく、こんな服どこできるんだろう?というデザインのものがたくさんあって面白かったことを思い出しました。今でもあるのかしら?

(レビュー:Roko

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

本が好き!
書店主フィクリーのものがたり

書店主フィクリーのものがたり

かつては愛する妻と二人で売っていた。いつまでもそうすると思っていた。しかし、彼女は事故で逝き、いまはただ一人。ある日、所蔵していたエドガー・アラン・ポーの稀覯本が盗まれる。売れば大金になるはずだった財産の本が。もう、なにもない、自分にはなにも。それでもフィクリーは本を売る。

そしてその日、書店の中にぽつんと置かれていたのは――いたいけな幼児の女の子だった。彼女の名前はマヤ。自分も一人、この子も一人。フィクリーは彼女を育てる決意をする。マヤを育てる手助けをしようと、島の人たちが書店にやってくる。婦人たちは頻繁にマヤの様子を見に訪れるし、あまり本を読まなかった警察署長も本を紹介してくれと気にかけて来てくれる。みなが本を読み、買い、語り合う。本好きになったマヤはすくすくと成長し……

この記事のライター

本が好き!

本が好き!

本が好き!は、無料登録で書評を投稿したり、本についてコメントを言い合って盛り上がれるコミュニティです。
本のプレゼントも実施中。あなたも本好き仲間に加わりませんか?

無料登録はこちら→http://www.honzuki.jp/user/user_entry/add.html

このライターの他の記事