だれかに話したくなる本の話

コールセンタースタッフが語る「一番手強いクレーマー」とは

世の中にはいろんな仕事があって、どの仕事も特有の楽しさや、面倒くささがある。自分はまず就かない仕事だからこそ、その日常は興味をそそる。

「ひたすら怒られ続ける仕事」

『コールセンターもしもし日記』(吉川徹著、フォレスト出版刊)は、コールセンターのオペレーターの仕事についてこう表現している。怒られるのは誰でも嫌だ、たまにでも嫌だ。一体どんな日常なのか。

■「ひたすら怒られ続ける仕事」テレフォンオペレーターの日常

商品やサービスの不具合が出たり、料金プランを変更したり、今ではメールでの問い合わせも増えたが、かつてはこういう連絡はほとんどコールセンターにしていた。おそらく、人生で一度もコールセンターに電話をしたことがない人はあまりいないのではないか。

それだけにコールセンターのオペレーターはさまざまな顧客の対応をする。ものわかりのいい人ばかりではないのはもちろん、タチの悪いクレーマーや見下した態度の顧客も多々いるわけで、ストレスフルな仕事ではある。

苦情を言われるなどというレベルではない。喚かれ、キレられ、怒鳴りつけられる。平穏な時間が流れるオフィス街の中、一歩コールセンターに足を踏み入れれば、別世界に迷い込んだという錯覚を起こさせるほどの非現実的な日常がそこにはあった。(P2より)

もちろん会社やサービスによってコールセンターに電話をかけてくる客層は違うため、すべてがこの調子ではないし、忙しさも様々。しかし、それでもおかしな顧客はやはりいるようで・・・。

■コールセンター職員が体験したトンデモクレーマーとは

ほとんどの人が理解していることを理解していなかったり、誰もわからない独自の「自分ルール」で生きてたり、人の話に耳を傾ける力を持ち合わせない人がいる。俗にいう「常識がない人」である。オペレーターにとってはこういう人こそ大敵。クレーマーとしては一番手強いのだそう。

携帯電話会社のコールセンターのオペレーターをしていた著者が多く相手にしていたのは、料金の未払いで電話を止められた顧客からの苦情の電話だ。料金を払わなかったのは顧客の方なのに、彼らの中には怒鳴り散らしたり、オペレーターを恫喝するような人も。

ある高齢の顧客は、最初は穏やかに話していた。ただ、こちらが料金未払いで利用が停止されたことを告げると、「ちゃんと支払った」の一点張り。調べてみると、どうも支払ったのは携帯料金ではなく、固定電話の料金のようだった。

それを指摘すると「支払ったって言っているだろ!勝手に止めやがって!」と激昂。利用を止める前に一度書面で通知をしているはずなのだが「勝手に止められた」と、「頭の血管が破れるのではないか」というほどキレまくる顧客は止まらない。

当時のルールとしては、これまできちんと料金を支払ってきている顧客に対しては一度だけ数日間に限り利用を再開できるため「こうしたことは今回限りですので、お約束いただけますでしょうか?」とお伺いを立てても、とにかく怒鳴るばかりで話にならない。仕方なく利用再開の手続きをし、その旨を告げると「この大バカ野郎が!」と再度怒鳴られ、電話が切れたという。

こんなキレまくる顧客もいれば「払えねえから支払日を延ばせ」と命令してくる顧客もいるし、「名前覚えたからな。夜道、気をつけたほうがいいぞ」と恫喝する顧客も。

また著者が「得体が知れず気持ち悪い」思いをしたのが、こちらが何を話しても「すぐつなげ(利用を再開させろ)」としか言わない顧客だったという。自分が名乗っても「すぐつなげ」、すでに一度支払いの延期がある顧客だったため、利用再開は支払い後までできないことを告げても「すぐつなげ」、何を話しても「すぐつなげ」で、それ以外の言葉は一切発しない。電話口からは聞こえるガムを噛む音も印象に残っているという。怒鳴ったり凄んだりする人より、この手のタイプが一番不気味かもしれない。

悪質なクレーマーとのやり取りや、コールセンターに集う個性的なスタッフたち。問い合わせ窓口の向こう側には、私たちの知らない世界が広がっている。

彼らが感じるストレスや辛さ、そしてやりがい。なんとも生々しい一冊だ。

(新刊JP編集部)

コールセンターもしもし日記

コールセンターもしもし日記

「ひたすら怒られ続ける仕事」

派遣オペレーターが聞き耳立てる生々しすぎる人間模様――電話の向こうの知られざる世界

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