【「本が好き!」レビュー】『もう一杯、飲む?』角田光代、燃え殻、島本理生ほか著
提供: 本が好き!(この記事は、書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」レビュアーのmichakoさんによる書評です。
ときに酒は、記憶を呼び覚ます装置になる。わたしを魅了するあの人は昼間から水玉のお猪口を手にしていた。僕はビールの苦さに重ねて父の呟きを反芻する。恋の行方を探りながらそっと熱燗を飲んだ日、ただ楽しくて倒れるほど飲んだ夜、まだ酒を知らなかった若さを、今は懐かしく思う。もう会えない誰かと、あの日あの場所で。九人の作家が小説・エッセイに紡いだ「お酒のある風景」に酔いしれる。