【「本が好き!」レビュー】『部屋をめぐる旅 他二篇』グザヴィエ・ド・メーストル著
ネットで本の情報をつらつら探していたら……
『世界周游の向こうを張って42日間の室内旅行を敢行、蟄居文学の嚆矢となったグザヴィエ・ド・メーストル「部屋をめぐる旅」』!!
なんですとぉ~!!
こ、これは読まねば!
と、一気に舞い上がってしまいましたよ。
早速図書館蔵書を検索しましたが、まあ、無いだろうなぁ……ありません。
私、二つの行政区画の図書館を使えるんですが(本当は6行政区の図書館が使えるんですが、常識的に日常使える範囲にあるのは2つかな)、どちらにも無し。
じゃあ、もう買っちゃうもんね、ということ買っちゃいました。
え~。本書には、表題作の『部屋をめぐる旅』の他に、『部屋をめぐる夜の遠征』と『アオスタ市の癩病者』の二作が併録されています。
ここで余談ですが、『癩』の字を今書こうとしたのですが、私が使っているPCワードプロセッサーでは普通に変換しても出ないのよね。
ネットとかでも多くは『らい病』などと表記されていて、『癩』の字自体が避けられている感じがします(まあ、他の検索をすれば出るのでしょうけれど)。
それは、もちろん『らい病』に対する過去の偏見やひどい対応があったからこそだとは分かっています。
ですが、字を隠すこととは違う問題ですよね(それで良いわきゃないのよ)。
確かに、今はそう表記はしなくなりましたが、『癩病』と書いた時代もあったし、その時代はどうだったのかということをちゃんと分かるためにも、その字を使う単語を消してはいけないと思うのです。
はい、ということで、『アオスタ市の癩病者』のレビューがもう始まっているのですよ。
この作品は、らい(ハンセン病)に罹ったため、当時の無知と偏見のせいでただ一人で暮らさなければならなくなった男のもとに、一人の軍人が訪ねて来たというお話なのです。
軍人は何の偏見も無く、らい患者と親しく交わることを求め、実際にそうします。
当時は、らいは伝染病と考えられており、もう、患者さんはそれはそれはひどい扱いを受けたのです。
そんな時代に書かれた作品だと思うと、じわっと来ますよね。
これは良い作品。
さて、問題の『部屋をめぐる旅』なんですが、これがねぇ~。
皆さんは『蟄居文学の嚆矢』なんていうPR文と、このタイトルからどういう作品を想像しますか?
私は、他と交わることを捨て、ひたすら家の中の様々な部分を巡り、そこに意味を見出すようなマニアックな作品を期待していたのですが……
ぜんぜん違~う!!
一応、ご本人、そういう類のことを言うのですよ。
外部との交わりを断って、部屋の中で過ごす安楽みたいなことを言うのですが、結局何を書いているかというと、自分がつらつら考えるあれやこれやを綴っているだけのことで、別に部屋を巡って旅をしているなんていうことじゃまったくないのです!
そもそも、自分から求めて隠棲したわけじゃなく、そうさせられてしまったからその時のことをこれ見よがしに仮託して書いているとしか読めなかった。
まったくダメじゃん!
ストイックさの欠片もない!
続編(?)の『部屋をめぐる夜の遠征』だって、「朝は一人でいたいけれど、夜はみんなと交わりたいよね~」みたいなことを書いていて、全然隠棲してねーじゃねーか!(怒)。
なんですよ~。
結局、ぬるいのよ、グザヴィエのやってることは。
巻末解説等を読むと、結局、グザヴィエは決闘罪を犯したため、42日間の軟禁を命ぜられ、その間外に出られなかったから、何だか知らんけど、勝手に思ったことをつらつら書いた。
しかも、書き終えたわけでもなさそうで、その後もつらつら思うことを書き連ねたのをまとめたのが本作らしい。
だから、内容はこいつが何だかよくわからんことを冗長に書いているだけなのだよ~。
しかも、あんまり面白くないのだ。
まあね、蟄居しているのならそんなに面白いことを期待しちゃいかんのでしょうけれど、それを人に読ませるか~!!ですよ(一応、少部数ながら出したらしいよん)。
グザビエは、職業作家じゃなかったので(といっても、この時代、そもそも職業作家なんていうもんはなかったのだけれど)、そこは仕方ないのかもしれないけれど、文章が上手いとか、良いこと書いているとも決して思えないのだなぁ。
う~ん、これは宣伝文句に乗せられてしまったか。
ということなので、ものすご~く期待して読んでみたのだけれど、思いっきりハズされた感満開の本でございました。
あんまり、期待せずに、れーせーに読めばまた違った読後感だったかもしれません。
こんなレビューで申し訳ない。
(レビュー:ef)
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