将来お金に困らない「家づくり」 その最大のポイントとは?
「家づくり」――高い買い物だと言われているからこそ、失敗したくないという思いは強くなる。妥協をしたくないのであれば、「お任せ」ではなく、自ら情報を手に入れるよう動いていく必要があるだろう。
静岡県磐田市を拠点に展開する平松建築代表取締役社長の平松明展さんは、その著書『お金が貯まる家3.0』(カナリアコミュニケーションズ刊)の中で、「ライフプラン」の重要性を訴えて、資産形成にも大きく影響する「住んでお得」な令和の家づくりを提案する。
平松さんの提唱する「令和の家づくり」とは一体どういうものなのか。そして、「住んでお得」の意味とは?
(新刊JP編集部)
■ライフプランありきの「家づくり」がお金に困らない人生をつくる
――本書を執筆された経緯から教えていただけますか?
平松:一つは若い方々の家づくりに対して問題意識がありました。というのも、すごく安く済ませてしまっているように感じられて、その後のメンテナンスコストや光熱費のことを考えていないように思うことが多いんです。
私はライフプラン診断士という資格も持っていて、これまで500件くらいのライフプラン作成実績があるのですが、人生の中での住宅のコストって結構かかるんですよ。でも、家づくりの段階で多少費用がかかっても、ちゃんと建てることでその後に発生するコストを抑えられることができるんです。
それは資産形成のうえでも大切なことなのですが、まだ多くの人に伝わっていないので、少しでもそのことを届けたいというところからこの本を書き始めました。
――人生の先を見据えた家づくりを提唱したいと。
平松:そうですね。長期的な視野で、家族の人生も考えた家づくりができるのに、していない人が多いように感じます。私は、家づくりは人生づくりだと考えているので。
――ライフプラン診断士の資格を持っている平松さんならではの一冊だと思います。本書における家づくりの最大の特徴はなんですか?
平松:普通、ライフプランを考える際には、コストやリスクを逆算して入れ込んでいきます。家づくりも同じで、「この年齢で家を建てるということは、これから大きな地震に何回か遭遇する可能性があるから、耐震性をはじめとした家の性能もこのくらいにしないといけない」といった具合にコストとリスクを考慮する必要があります。
また、光熱費についても、「たとえば太陽光発電で月々の光熱費をこれくらい下げることができるから、初期費用がこれだけかかっても何年で回収できて、その後はお得に住める…」といった形で組み立てていくことができます。
建てた家がその後どうなっていくかというデータを元にしながら、その人のライフプランに合い、なおかつお得に住むことができる家を提案することができる。それが本書で書いた家づくりの特徴ですね。
――データに基づきつつ、「こういう家を建てればコスト面でもお得に住むことができる」ということを提案されているわけですね。では、タイトルの『お金が貯まる家3.0』の中の、「3.0」の意味するところを教えてください。
平松:この数字は進化の度合いを示すものとして使っています。
具体的に説明をすると、「1.0」は昭和の家づくりです。戦後の高度経済成長期、家が足りなくなり、大量建設が正義だった時代がありました。その時に建てられた家のことで、大量生産、大量消費がキーワードです。
「2.0」は平成です。経済が停滞する中で、技術革新が進み、家づくりにも大きな変化がでてきました。パッシブデザインという自然エネルギーを有効利用する技術ですとか、快適性や省エネがフォーカスされています。スマートハウスも「2.0」の中に入りますね。つまり今の家づくりの主流といえるでしょう。
そして「3.0」は令和の家づくりになります。
――「3.0」はどういったことが特徴になるのでしょうか。
平松:『ライフシフト』で人生100年時代が提示され、老後は2000万円必要という話もありますし、75歳まで働く時代とも言われていますよね。
私たちはライフプランに沿って家づくりを提案しますが、若い段階からしっかりライフプランを練って、そこから逆算してコストを最小化していくと、人生にかかるお金はかなり変わってきます。「2.0」はただ高性能な家でしたが、「3.0」ではそこに、人生という要素を入れる。それが「家づくり3.0」の大きな特徴といえます。
長生きするほど、リスクが多くなるのが人生です。経済リスクもありますし、地震などの災害リスクもあります。その中で、そういったリスクに対応できるような立地条件、間取り、性能といったものを取り入れていくことが、これからの家づくりには求められると思います。
――では、「お金が貯まる家」とは、具体的にどのような部分でお金が貯まるのでしょうか。
平松:基本的に若い方々は賃貸か持ち家かで悩まれると思いますが、賃貸料はずっと発生していくものですよね。一方、持ち家で住宅ローンを組むと、賃貸の額よりも少し割高になるかもしれませんが、ローンを返し終わればお金を払う必要はなくなります。
そして、「お金が貯まる家」を建てることで、太陽光発電の収益や光熱費の節約、メンテナンス費の節約も見込むことができます。家にかかる費用を計算していくと、賃貸よりも月々の費用が安く済むこともあります。
つまり、本来かかる費用が、「お金が貯まる家」によってかからなくなる。その差分でお金を貯めることができるわけです。
――まさに「住んでお得」な家ですね。
平松:そうです。だから、場合によっては資産の観点から新築をおすすめしないこともあります。それはどういう人かというと、主に年齢が高い方です。60歳で家を建てても回収の期間が短いですから。ライフプランを作ったときに、アパートの方がお得ということもありえます。
――家は一生に一度と買い物と言いますが、家自体の寿命は何年くらいになるのですか?
平松:平均築年数でいうと、32.1年ですね。
――先ほど長期的な視点で住める家を、という話がありましたが、地震の多さや高温多湿という日本の環境の中で、長く住み続ける家を作るのは可能なんですか?
平松:その答えが本書で書いたWB工法だと思っています。WBとは「W Breath」、二重通気という意味で、そのポイントは3つあります。
1つめは、壁の中を空気が流れるように仕組みになっていて、通気性が高いということ。 2つめは、形状記憶合金という一定の気温に温度になると変形する装置を使って、夏は壁の中の空気を流し、冬は外の空気を遮断することで、自動的に気密性をコントロールします。 そして最後の3つめは、内壁が湿気を通し、においや化学物質も室内から室外へと排出されます。
このように呼吸する家にすることによって、常に室内の空気がきれいな状態で保たれ、湿気もたまらないので結露しにくく、家も長持ちするわけです。
――なるほど。
平松:WB工法では、今言ったように、夏は壁の中の空気を流して室内の空気を快適に保ち、冬は外の空気を遮断して気密性と断熱性を上げることで、室内の熱を逃がしにくくします。そのため、夏も冬も快適な環境を家の中につくることができるんです。
WB工法参考動画
・【平松建築】WB HOUSE コンセプトムービー
・夏涼しく冬暖かい無結露住宅の作り方
(後編に続く)