だれかに話したくなる本の話

コロナ禍でピンチの中小企業を救う営業の一手 「自前オンライン展示会」とは?

このコロナ禍は、私たちのビジネスの進め方にも大きな影響を及ぼした。
特に営業活動はオフラインからオンラインへの切り替わりが促進され、戸惑ってしまったという企業も少なくないだろう。

そんな中で、展示会営業®コンサルタントの清永健一さんは「自前オンライン展示会」による営業の「DX」化を提唱し、ウィズ・コロナ時代に適応した新たな営業手法を伝授している。それが今回上梓した『中小企業のDX営業マニュアル〜オンライン展示会をきっかけにしたスムーズな営業改革〜』(ごま書房新社刊)だ。

ここでは清永さんにお話をうかがい、今こそ変えるべき営業の形、そして見込み客を確実に集め、成約までつなげる「自前オンライン展示会」についてお話をうかがった。

(新刊JP編集部)

■コロナ禍で変わった営業活動。オンラインでやっていけるのか?

――コロナ禍で企業の営業活動にも大きな影響が出ているかと思います。展示会営業®コンサルタントの清永さんから見てどんな変化が起きていますか?

清永:まるっきり変わったと言っても過言ではないです。営業はいかに相手と心の距離を縮めるかということが大事ですが、そのためにまず物理的に近づいていくということを一生懸命やっていたんですね。

それは、足しげく通うとか、「近くに来たんで寄っていいですか?」と言って雑談しにいくとか、業種によっては、飲みに行くということもあるでしょう。そういったことが完全にできなくなって困ったというのが第一段階です。

緊急事態宣言もあった4~6月は、誰も予想していなかった不測の事態なので仕方ないという面もあったと思うんです。そして、7月~9月になると、感染がゆるやかになって、コロナ禍以前にちょっと戻りかけてきたかな?という淡い期待がありました。中小企業は、この時期に、コロナ以前の営業方法に戻そうとしていたところも多かったのです。ところが、10月に入ってまた感染が拡大してきて、気づくと2020年が終わってしまう・・・

もう元に戻ることに期待するのはやめて、今までとは違うことをしないといけない、とさすがに多くの企業が気づきました。でも、何をやっていいのか分からないし、何かやろうとしても、コロナ以降社内が停滞ムードで勢いがないとおっしゃる方が非常に多い。ぼくは、そういう方たちのためにこの本を書きました。

――企業活動のデジタル化というところでは、テレワークが広がったり、打ち合わせもzoomを使ってといったことが進んでいますが、営業活動の本質的な課題はクリアされていないということですか?

清永:そうですね。テレワーク云々は、多くの場合、社内でのコミュニケーションのことを指しています。社内連絡はメールからチャットツールにしましょうとか、印鑑をやめましょうとかですね。一方で課題なのが社外への働きかけです。そこに解をなかなか見出せない。

これまでバリバリ昔ながらの営業をしていた企業が、いきなりオンラインに置き換えろと言われても、どうやったらいいのか正直分からないと思います。そういう企業が非常に多い印象ですね。

――こういうご時世である以上は、どの企業も営業活動のオンライン化を考えているとは思います。その中で対応できている企業とできていない企業の違いはどこにあるとお考えですか?

清永:テクニック的なこともありますが、本質的なところでいうと、「自社から商品を買った後、そのお客様が自社の商品を活用して何をしたいのか」ということに興味を持っているかどうか、が非常に重要だと感じています。

例えばオフライン、つまり顔と顔を突き合わせて営業をして、「うちの商品はこれです」と説明し、買ってもらう。これは普通の営業だけど、これってただ説明をして商品を買ってもらっているだけで、相手がその商材をどう使うのか、何を解決しようとしているのかを売り手がわかっていないですよね。

そうではなく、顧客がどういう事情をお持ちで何に困っているのか、どう変えたいのか、どのくらい変えたいのか、そういうことをちゃんと把握した上で、「だったら弊社の商品が役に立つかもしれません」と提案することが営業として大事なことで、これが僕の言っている「教える営業」なんです。

この「教える営業」への意識変革ができれば、あとはそのメッセージを何に乗せて送るかだけなんですよね。つまり、今までは対面コミュニケーションだったけど、オンラインならば動画、記事、メール、電話、手段はいろいろあります。

――営業は商品の説明をするだけだと思っていてはいけない。

清永:そうです。相手がどうなりたいのかをしっかり把握する。でも実は、どうなりたいかというのは相手自身も分かっていないことが多いんですよ。「なんとなくこうなりたい気がするかなぁ…」というものしか出てこない。

見込み客が「なんとなく」と言っている間は商材を売ろうとしないことです。なぜなら売っても使ってもらえない可能性があるからです。だから、その時は「具体的にどうしたいのかを一緒に考えていきましょう」と提案すればいいんですよ。これが「教える」ということであり、「一緒につくる」ということなんですよね。その関係に持ち込めさえすれば、リアルでもオンラインでも関係ありません。

――その「教える営業」はオンラインでもオフラインでも関係ないと。

清永:一般的に、ソリューション営業とか、パートナーシップ営業と言われているものと近いと思います。この「教える営業」は、リアルでの営業ができない状態でも、本書に書いた「自前オンライン展示会」を使った営業をすれば、必ずできます。だから、今までの営業方法ができなくなって困ったという人は、このコロナ危機を変わるチャンスと捉えてほしいです。

今回タイトルに「DX営業」と銘打っていますが、「DX」とは、Dがデジタルで、Xがトランスフォーメーションを指します。このうち、大事なのは「D」よりも「X」、トランスフォーメーション=変革の方です。営業のやり方をトランスフォーメーションしていくことが重要なのです。

本書の中でもオフィス家具の会社さんの実例を出していますが、ウィズ・コロナの時代にあってオフィスはどうあるべきかという観点で、本質的なニーズを掘り起こしていく。例えば、スペースが狭い中でソーシャルディスタンスを保つにはどうすればいいか、共有PCのキーボードの消毒をいかに考えるか、アクリル板をどのように配置するとよいか・・・などなど、そういう課題ってたくさんあると思うんですね。

見込み客が抱えていそうな課題に対して「こうすればいいですよ」と教えてあげる。こういう営業の方法にトランスフォーメーションしていくんです。

――その「教える営業」の核となるのが「自前オンライン展示会」なわけですね。これは一体どういうものなのか教えていただけますか?

清永:これまで展示会のブースで訴求していたことを、ウェブ上にあげて、距離や時間の制約にとらわれずに見込み客に伝わるように自社で展開することを「自前オンライン展示会」といいます。

まずはテーマに沿ってウェブサイトを作ります。先ほどのオフィス家具の会社の例で言えば、机や椅子の商品スペックをただ紹介するのではなく、「ウィズ・コロナ時代のオフィスのあり方」というサイトを作り、飛沫を防ぐオフィスレイアウトや、消毒の仕方、換気のポイントなどを記事や動画にしてアップしていきます。

さらに、サイト上でオンラインセミナーを展開します。オンラインセミナーは3ヶ月に1回、年4回くらいのペースが理想です。これを自前でやるということが大切になります。

――合同オンライン展示会もある中で、自前で展開するのはどうしてですか?

清永:自前でやれば、100%自社でコントロールできます。不測の事態が起こっても、自社で自力で開催できる取り組みを積み重ねていけば、必ず社内に勢いが生まれます。このことが、今とても重要だと感じています。
それに、あらかじめ自前で展開しておけば、合同オンライン展示会に出展するときには、すでに記事や動画などのコンテンツがあるので成果を出しやすくなります。また、コロナが沈静化すればまたリアル展示会が復活するはずです。実際にリアル展示会は9月以降、復活しつつあります。リアル展示会に出展する際にも、自前オンライン展示会でアップした動画を使えるし、オンラインセミナーで話している内容をそのままリアル展示会でも、ブースまでで話せばいいですよね。

少し前に自社のオウンドメディアを作ろうというブームがあったじゃないですか。それに反応した中小企業はほとんどなかったと記憶していますが、実はこの自前オンライン展示会って、オウンドメディアを作ろうということとかなり近いことを言っています。

そうやって顧客へのアプローチの仕方をトランスフォーメーションしていく。単に商品の説明をするのではなく、見込み客の実情に踏み込んで役に立つ情報を提供するというスタンスに変えていくということが重要なのです。

(後編に続く)

中小企業の「DX」営業マニュアル「オンライン展示会」をきっかけにしたスムーズな営業改革術

中小企業の「DX」営業マニュアル「オンライン展示会」をきっかけにしたスムーズな営業改革術

2020年は新型コロナウィルスの感染拡大によって社会が一変した、そんな年だった。もちろんそれはビジネス、仕事の進め方にも大きな影響を及ぼした。

その一つが営業活動だ。「客先に訪問し、世間話をしながら相手のニーズを引き出し、商材の販売につなげていく」というやり方は、直接の面会自粛の動きによって、難しくなった。これまでの営業セオリーが封じられてしまったのだ。

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