『透明人間』H.G. ウエルズ著【「本が好き!」レビュー】
提供: 本が好き!こんな時透明人間っていいかもと思ったら、読んでいくにつれて、彼は極寒の不幸をしょいこんだようでうすら寒く涼しくなってきた。
子供の頃、透明人間ってどうしたらなれるの、とたまに考えたことがある。なんだかとても都合がいい面白いことができるではないか。こっそりとあれもこれも。
ところが読んでびっくり。
もちろんこの話は、物理の「ブ」から入った方がいいらしいけれど「ブ」のかけらしか知らなければ透明になるのは無理かもしれないな。
透明になるのに成功したグリフィンがオックスフォードで同級だったケンプ博士に教える。
物が見えるというのは、物体は光を吸収するか、反射するか、屈折させるか、あるいはこれら全部を一度に行うかだ。もしこれらのどれも行わない時、物体は見えなくなる。
彼は 様々に物質が透明に見える例を挙げる。屈折率が同じなら物は見えなくなる。水の中のガラスのように、その上人間は、云々。
三年間頑張って研究を続け、費用がなくなると父親が借りていた金を盗みそのために父親が死んでも気にかけず、ついに成功したのだ。 事実見えないのだから、ケンプも信じて彼を保護した。
透明になったグリフィンだが、よく知られているように包帯で顔を隠し、帽子にコートでロンドン郊外の駅に降りた。
宿をとったが食事中も服を着たまま、宿の女将の不審を招く。金もない。こっそり盗んでくるが、透明人間だということは何かの折に知られてしまう。秘密を知られた泥棒には研究ノートを盗まれてしまう。
身を護るためということだが、さんざん暴れまわり、追っ手を殴り追い詰められる。
身体は透明でもなかなか不便なもので、お腹は空く、冬空の下では体が冷える。休むところがない。
そこでケンプに助けを求める。この頃には人を殺し盗みを働き追われる身だった。
ケンプは話を聞き、その残忍性の根拠は、グリフィンの研究を理解できない馬鹿どもの妨害だという身勝手なものだと知る。
実生活は予想通りにはいかないもので、いくら透明でも痕跡を全て消すことはできない。 グリフィンは追い詰められる
最終章 「透明人間狩り」でついに無惨に撲殺され、徐々に姿を現す。
透明人間というのは全く不便で苦しく辛いものだ。
冬だったのも不幸だったな。夏なら裸でも過ごせるかも。いやそれだけではないかな。
(レビュー:ことなみ)
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