キーワードは「空き家・古家」低額不動産投資で勝つためのポイントは?
中小零細企業や個人事業主にとって、いかに経営上のリスクを排除し、安定して利益を出せる状態を作るかが最大の課題といっていい。
まして、変化が速く、不安定な時代である。これまで安定して収益をあげてきた事業が、突然立ち行かなくなることもある。それは、今年のコロナ禍を見ていても明らかだろう。問題は小規模事業者や個人事業主が、こうした不測の事態に耐えるだけの資金的な余裕がないケースが多いことだ。
だからこそ、本業に次ぐ収益源として、不動産投資が注目を浴びている。『空き家・古家不動産投資で利益をつくる』(フォレスト出版刊)は、資金が乏しい小規模事業者でも始められる「空き家・古家不動産投資」のノウハウを教える一冊である。
今回は著者の大熊重之さんにインタビュー。この投資方法を実践するうえでのポイントを聞いた。
■変化の速い時代のリスクヘッジとしての「空き家・古家不動産投資」
――大熊さんは中小零細企業・個人事業主こそ経営のリスクヘッジとして不動産投資をやるべきというご意見を提唱しています。なかでも、大熊さんが特に「空き家・古家」に目をつけた理由について教えていただきたいです。
大熊:まず、今回の本を読んでいただきたいのは、経営者の中でも社員が10人や20人の、中小企業でも「零細企業」に近い規模の会社の方や、個人事業主の方です。
こういう方々は不動産投資をするといっても、新築や築浅のマンションだと資金的に厳しいというケースが多いですし、回収までに20年、30年かかるような投資だと、それまでに会社がどうなっているかもわかりません。
ただ、空き家や古家への投資であれば500万円前後で始められますし、関東だと利回りが12%~13%、関西だと14%~15%ほど見込めますから、10年以内に投資したお金を回収できる目算がたちます。「低額で始められる」のと「回収までの時間が短い」というのが、中小企業に空き家や古家への投資が向いていると考える理由です。
もうひとつ、変化の速い時代に生き残っていくための備えをしていただきたいという気持ちもあります。今回のコロナ禍のように自然災害によって不況がくることもありますし、自社の業界でイノベーションが起きて、それまでの需要が減ることもある。こうした中で生き残っていくためには1つのビジネスに頼るのではなく、別の収益源を持ってリスクヘッジすることが大切で、空き家・古家を利用した不動産投資はそのために最適なんです。
――大熊さんご自身はなぜこの投資手法を始めたのでしょうか?
大熊:私も会社を経営しているのですが、ある時に中古の区分マンションをひと部屋買わないかという話が舞い込んで、買ったことがあったんです。
それをリフォームして賃貸に回そうとしたのですが、まったくお客さんがつかない(笑)。お金をつかってしまっているし、どうしたものかなと思って自分なりに工夫してもう一度リフォームをしたり、不動産業者と相談したり、工夫してなんとか借り手を見つけたんですね。ただ、投資としては全然利回りがありませんでしたし、完全な失敗でした。
ただ、その時の経験である程度不動産の知識を得られたんですね。だから次に、不動産投資の話が来た時に、リベンジのつもりでもう一度やるか、と。その不動産というのが、「築40年以上の戸建ての古家」だったんです。
これが、やってみると安く済みますし、借り手もつきやすいし、すごくやりやすかったんですね。これなら自分の会社の「新規事業」としてできるんじゃないかと思って始めたのが最初で、今はアパートも含め30戸弱に投資しています。
――それだと、収入もかなりのものなのではないですか?
大熊:家賃5万円だとして、150万円弱ですから、会社のメインの収益源になるというほどではないのですが、中小企業や個人事業主の「副収入」としては大きいですし、本業のリスクヘッジになるんですよね。賃貸不動産業は収入の波がほとんどないので、企業のポートフォリオに組み込めるんです。
――ちなみに、本業は何ですか?
大熊:もともとは不動産とは何の関係もない塗装業です。
――空き家や古家を買ってリフォームするところで役立ちそうですね。
大熊:いや、塗装といっても自動車などの部品塗装ですから、建築やリフォーム方面の知識はまったくなかったです。製造業のことしか知らない経営者でした。
そして、これも私が中小企業経営者に不動産投資をおすすめしている理由なのですが、私が空き家・古家への投資を始めてから、すごく視野が広がったんですよね。不動産というこれまでまったく知らなかった分野のやり方を知ることで、これまでやってきた仕事に固執せずに新しい事業を考えられる頭になるという点で、経営者自身の成長につながる面があります。
――大熊さんにはどんな変化があったのでしょうか。
大熊:部品塗装業は基本的に「下請」ですから、どうしても売り上げが依頼主の会社に左右されます。そこからなんとか脱け出したいともがいていたのですが、空き家・古家投資を始めたことで変わっていきましたね。
リフォーム業を始めましたし、そのノウハウを教える教育事業も今はやっています。あとは、空き家・古家投資の勉強会を開くための一般社団法人を立ち上げたり、やれることが広がりました。また、IT・広報関係の会社や他の一般社団法人の役員などでお手伝いしています。
――空き家・古家投資の具体的な方法についても少しお聞きしたいです。日本に空き家は800万戸以上あって、その中から投資する物件をどう選んでいくのでしょうか。
大熊:よく知られているように、どんな地域でも駅前や駅近は土地が高くて、家賃も高い。逆に駅から離れると土地の値段は落ちるわけですが、家賃はそこまで落ちないんです。
駅から遠いと、駅前と比べて土地の値段は3分の1とか、ひどいと5分の1くらいになったりするんですけど、家賃はせいぜい2割とか3割下がるくらいです。これを踏まえて、土地はすごく安いけど、家賃はそこそこ取れる立地の物件を狙う、というのがまず一つあります。
――土地が安くても家賃がそこそこ取れているということは、住みたい人の需要があると見ることができる。
大熊:そういうことです。もう一つは、地域ごとの生活保護の家賃補助の金額をベースにするのも一つの方法です。
生活保護の家賃補助額は地域によって違うのですが、3人が住めるくらいの戸建て物件の家賃補助額が5万円の地域だとしたら、5万円から6万円の家賃をとって採算が合うような物件を探す、というやり方です。たとえば初期費用400万円・利回り15%でやりたいのなら、家賃5万円で年間60万円ですから、物件を買うのに400万円つかってしまったら、リフォームに使うお金がなくなるので、リフォーム代200万円と想定して、200万円以内で購入できる物件を探す、という考え方ですね。
そうやって利回りから逆算していくと、物件を買えないことはあっても、買って失敗することは少なくなります。
(新刊JP編集部)