Q1、まずこの本を書くことになったきっかけを教えてください。
平成19年3月に産経新聞の取材を受けました。過保護な親に育てられた人たちが職場でどのような問題を起こしているのか事例があったら教えて欲しいという内容でした。社会保険労務士という仕事を通じて、過保護で身勝手な社員の相談を顧問先から受けていたのでふたつ返事で承諾し、自分に甘い社員を砂糖の甘さにたとえてシュガー社員と名付けたところ、3月14日に「溶け行く日本人。シュガー社員、ツケを払うのは会社」というタイトルで大きく記事が掲載されました。
その新聞をたまたま目にされたブックマン社編集長の小宮亜里さんから「シュガー社員の本を執筆しませんか」とご連絡があったのがきっかけです。
シュガー社員に悩まされている方々の手助けになればと執筆いたしました。
「シュガー社員」とはどのような社員のことを言うのでしょうか。
一言で言うなら「過保護に育てられ、自立心に乏しい若手社員」
自分に甘く、仕事を平気で放り出したり、何の連絡もなく突然退職したりと周りに迷惑をかけても全く気にしない社会人をシュガー社員と呼んでいます。
Q3、「シュガー社員」という存在がいることを感じ始めたのはいつ頃のことですか?
また、はじめて、「シュガー社員」と出会ったときの印象を教えてください。
シュガー社員の存在はかなり昔からあったと思います。私がまだ若くお勤めしていたときにもシュガー社員的存在はいたと思います。ただ最近はとてもその存在が目立つ。権利の要求がすごすぎてびっくりします。みんなが忙しい時でも平気で有給休暇を申請して旅行に行き「楽しかった~」とおみやげを配り出す神経が理解できません。
初めてシュガー社員出会った時は本当に驚きました。「こんなことを平気で言うなんて社会人として恥ずかしくないんだろうか、この人はこれからどんな職業人生を送るんだろうか」ととてもその人のことが心配になりました。
Q4、なぜ「シュガー社員」が増えているのでしょうか。
一番大きいのは家庭環境だと思います。職場ではフル勤務だとだいたい8時間は会社にいることになります。それほどの長い時間ですから当然その人の「生活」の部分も見えてきます。
「甘やかされて育てられたな」「きっと部屋は汚いだろうな」等、その人の会社での行動や休み時間の会話によって仕事以外の部分も見えてくることがよくありますよね。自分勝手で人に迷惑をかけても何とも思わないというのは、会社に入っていきなりそうなるわけではなく、子供の頃からそうゆう環境にあったからではないでしょうか。
「甘い親」以外に「自分らしさが自分勝手になったゆとり教育」「インターネットで現実逃避」「終身雇用制度崩壊による転職志向」など外部要因もシュガー社員を増やしているのではないかと思います。
Q5、現在の企業における「社員教育」のあり方について、田北先生が思っている感想をお聞かせ下さい。
大企業は社員教育のシステムができていますが、中小、零細はなかなか社員教育に費用を捻出できずにいます。費用以外にも社員教育の時間、社員教育中の賃金などいくらそれが後々会社に高い利益をもたらすもだとわかっていてもせっかく教育しても、いともあっさりと社外に流出されてしまうとどこまで時間や費用をかけていいのか不安になると思います。もちろん「教育してもその社員が外部に流出しないような組織作りをすることが大事だ」という事は十分承知しています。
ただ中小企業、零細企業は人の流出が大手企業よりは激しいので、社員教育に本腰入れられないというのが本音ではないでしょうか。
最近はたくましい社員の方もいて「自己啓発したいが会社はあてにならない。自分で行う」という方も増えてきています。
専門的なことは外部の教育機関にまかせるとしても、社内でいくらでも社員教育は可能だと思っています。企業で「作業」は教えますが、「仕事」というものを教え込まなければ成果はあがらないと思います